2013年02月18日

堕落・救済神話とは

秘儀神話が神的な霊魂の地上への埋没と覚醒を、神の死と復活の物語の中で象徴的に語りました。
これに対して、それを直接的に語る神話が、秘儀宗教の発展と並行してヘレニズム・ローマ期に至るまでに形成されました。

この神話は、神に等しいような「原人間」などの堕落や殺害によって、霊魂が地上の人間として生まれることになったと語ります。
そして多くの場合、最後には霊魂は救われるとする終末の予言がなされます。
本ブログではこれを「堕落・救済神話」と呼びましょう。


この章では、「堕落・救済神話」の背景となった神話(ゾロアスター教)や、類似する神話(ユダヤ、キリスト教)も含めて、順に「堕落・救済神話」の発展(ヘルメス主義、グノーシス主義、ミスラ教、マニ教)を見てみましょう。
これは、古代ペルシャからヘレニズム・ローマ期までの宗教潮流を見ることになります。
 

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2011年11月07日

ナーローパの生涯

インドの後期密教の「マハー・ムドラー」と呼ばれる教えの成就者であり、チベット仏教のカーギュ派の聖者ミラレパの、グルのグルに当たるのが、ナーローパです。
彼はナーランダー大学の大僧院長に登り詰めたエリートのインテリ僧でした。
しかし、その立場を捨てて、本当の悟りに導いてくれるグルを求めて旅に出たとされています。


ナーローパの伝記の、グルを求めた旅までの部分を紹介します。
この部分は、グルを求めた旅が、求道の秘儀的物語となっています。
ナーローパを探すことが、真理・悟りを求めることの象徴となり、最後にはナーローパを探すことを捨てることで、真理に到達します。


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ある日、ナーローパが太陽に背を向にして、文法と認識論と精神的訓練と論理学の読書をしていると、醜い老婆が現れて「理解しているのは言葉か意味か?」と聞いた。
ナーローパが両方理解していると答えると、老婆が泣き出して「あなたがウソをついているのが悲しい」と語った。
ナーローパが、「では誰が意味を理解しているのか」と聞いた。
すると、「私の兄弟です教えが欲しければ自分で探して教えを乞いなさい」と答え、虹のように姿を消した。
ナーローパはそのグルのティロパを探して、東に向かった。


岸壁と川の間の狭い足場にグロテスクな姿をした病気の女が道をふさいでいた。
ナーローパが女を飛び越えて行くと、女は虹の後光をまとって空中に舞い上がり語った。
「究極の実在の中では一切は同一となる。
習慣的な思考に束縛されていて、どうしてグルを見つけられようか。」
ナーローパは気を失ったが、回復してから反省し、誰でも会う人には、教えをもらうように接するようにした。


その後、狭い路上で害虫がたかって悪臭を放つ雌犬に会った。
ナーローパが飛び越えると、その犬も虹の後光をまとって空中に舞い上がり語った。
「慈悲の心を育てることなくして、どうして自分を受け入れてくれるグルに巡り合えようか。」
ナーローパは気を失ったが、回復して、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパはある男に「ティロパを見かけたことはありませんか」と尋ねると、「俺の両親の頭を逆さにひっくり返すのを手伝ってくれたら教えるよ」と答えた。
ナーローパは悪党に加担はできないと考えると、その男は虹の後光をまとって空中に舞い上がって語った。
「自我に執着する頭蓋骨を無我と空性の木槌で砕かないのであれば、どうしてグルを見出せよう」。
ナーローパは気を失ったが、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは、人間の死体から腸を引き裂き切り刻んでいる男に出会った。
ティロパを見かけたことはないかと尋ねると、その男は、手伝ってくれたらティロパの居所を教えると言ったが、ナーローパはやはり手伝わなかった。
すると、男は虹の光の中に入り、こう語った。
「輪廻の束縛を絶ち切らないのであれば、どうしてグルを見出せようか」。
ナーローパは気を失ったが、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは、川岸で生きた男の人の胃を切り開いて、湯で洗っている悪者に出会った。
ティロパを見かけたことはないかと尋ねると、その男は、手伝ってくれたらティロパの居所を教えると言ったが、ナーローパはやはり手伝わなかった。
すると、男は空中の光の中に立ち現われて、こう語った。
「輪廻を洗い清めることなく、どうしてグルを見出せようか」。
ナーローパは気を失ったが、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは大王の都に辿り着いた。
大王にティロパを見かけたことはないかと尋ねると、大王は、自分の娘と結婚したらティロパの居所を教えると言った。
ナーローパは結婚して長い時を過ごしたように思えたが、彼を去らせたくないと思った大王は、娘を取り戻した。
すると、ある声が聞こえてきた。
「魔術にだまされていないか? 
邪悪な生活に浸っていて、どうしてグルと出会えようか」。
ナーローパは我を取り戻して、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは、猟犬の引き連れ、弓矢を手にした黒い肌の男に出会った。
大王にティロパを見かけたことはないかと尋ねると、男は、この弓矢で鹿を殺したら居所を教えると言った。
ナーローパが断ると、男は次のように語って、姿を消した。
「私は、思いの定まらぬ鹿を、欲望から解き放たれた矢で殺した。
明日は湖に魚釣りに行くとしよう」。
ナーローパは気を取り戻して、また、祈りを捧げながら、湖にやってきた。


その近くで、畑を耕し、畑のあぜにいる虫を殺して食べている二人の老人に会った。
彼らにティロパを見かけたことがないか尋ねた。
すると、「わしの家にいたよ、案内する前に魚を食べな」と言った。
ナーローパは、自分は僧なので夕方に食事はできないと断った。
すると、老人は次のように語って、姿を消した。
「習慣的な思考に束縛され、魚を食わずして、自我を強めて喜んでいては、どうしてグルを見出せようか。
明日はわが両親を殺すとしよう」
ナーローパは気を取り戻して、旅を続けた。


ナーローパは自分の父親を杭で刺し、母親を地下牢に閉じ込めたことがあり、今、両親を殺そうとしている男に出会った。
その男にティロパを見かけたことはないかと尋ねると、男は、両親を殺すのを助けてくれたら案内すると言った。
ナーローパが断わると、その男は次のように語って消えた。
「良心に由来する二分法の煩悩を滅ぼさないのであれば、グルを見出すのは難しい。
明日は出かけて物乞いをしよう。」
ナーローパは気を失って、回復してから、祈りを捧げて、旅を続けた。


ナーローパはある庵に辿り着いた。
そこに住んでいる隠者の一人がナーローパを見つけて接待をした。
ナーローパが、ティロパを見たことはありませんかと尋ねると、「自分がティロパだと言っている乞食がこの庵の中にいますよ」と答えた。
その乞食は、生きた魚を油で炒めていた。
隠者達がそれを見て、この庵の中で悪事を行うなと、乞食を叩いた。
乞食は指をパチンと鳴らすと、魚は湖に帰っていった。
ナーローパはこの男こそティロパに違いないと思い、教えを乞うた。


その乞食はシラミをナーローパに手渡して、殺すように言った。
しかし、ナーローパは殺せなかった。
すると、乞食は次のように語って姿を消した。
「習慣を作り出す思考というシラミを殺すことなく、グルを見出すのは難しい。
明日は奇人ショーを見に行くとしよう」
落胆してナーローパは起き上がり、探索の旅を続けた。


広々とした平地に来た時、大勢の片目の人達、目の見えない人、耳の聞こえない人、話すことのできない人、走り回ることのできない足の悪い人、そして自分自身を優しく撫でる死体に出会った。
ナーローパが、ティロパを見たことはありませんかと尋ねると、彼らはこう告げた。
「その人も、どんな人も見たことがないよ。
もし、あなたが本当にその人に会いたいなら、次のようにすることだ。
二分法の束縛から放たれよ。
そうすれば、片目でいることは大衆の資質であることであり、
目が見えないことは、ものを見ることなくして見ることであり、
耳が聞こえないことは、ものを聞くことなくして聞くことであり、

死神の動かざることは、無為なるものの微風であることを、理解する内なる太陽が輝く。」


このようにマハー・ムドラーのシンボルが示されて、すべてはかき消えた。


==


ナーローパが自殺寸前のところで、ティロパが現れ、弟子として受け入れます。
その後、ティロパは不動のまま一年座り続けました。
一年の終わりになって、ティロパはわずかな動きを見せました。
ナーローパは教えを乞うようにする素振りを見せました。
すると、ティロパは彼に、高い寺院の屋根から飛び降りることを要求しました。
ナーローパは言われた通りにすると、体がつぶれてしまい、大変な苦痛を味わいました。
しかし、ティロパが彼に手を触れると、治ってしまいました。


これと同じパタンが11回続きました。
ナーローパは、屋根から飛び降りることのかわりに、火の中に身を投げ、死ぬまで打ち叩かれ、ヒルに血を吸われ、燃え盛る破片で突き刺され、死ぬほど走らされ、再び打ち叩かれ、もう一度打ち叩かれ、女性との関係に苦しまされ、配偶者を師に与えて虐待されるのを見つめさせられ、両腕両足を切断して曼荼羅状にして師に差し出させられました。
その都度、ティロパは手で触れることで治し、貴重な教えを授けました。
 

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2011年08月31日

マヤ神話「フンアフブーとイシュバランケー(ポポル・ヴフ)」

マヤの聖典「ポポル・ヴフ」の中に書かれている、フンアフブーとイシュバランケーの双子の物語を紹介します。
何度か死と再生を経て、不死を得る話です。
二人は天体であり、トウモロコシです。
長い話なのですが、簡略的な荒筋だけの紹介です。

兄弟のフン・フンアフプーとヴクブ・フンアフプーは日ながサイコロ遊びと球戯(*マヤでは球戯は天体の動きを関係した聖なる儀式)に明け暮れていました。
冥界のシバルバーの王フン・カメーとヴクブ・カメーがその音がうるさいのと、その遊び道具が欲しくて、シバルバーに来させろと部下に命じました。
そして、部下達は二人を騙して焼石に座らせたり、シバルバーの「闇の館」、「震え上る館」、「ジャガーの館」、「蝙蝠の館」、「剣の館」などに次々入れて、騙してこらしめ、最後には殺して埋めてしまいました。


フン・フンアフプーの首だけは、木に吊るしました。
すると、木が実でいっぱいになりました。
ある少女がこの木の近くに来た時、フン・フンアフプーのしゃれこうべが娘の手のひらにつばを吐きだしました。
すると娘は子供を宿し、フンアフブーとイシュバランケーが生まれました。


フンアフブーとイシュバランケーには二人の兄がいて、二人をいじめました。
しかし、二人は兄たちを騙して魔術を使って猿にしてしまいました。


二人は母やお婆さんに気に入られようと思って、トウモロコシ畑を作りました。
しかし、夜にたくさんの動物が魔術で邪魔をしていて、次の日には畑は荒れていました。
二人は動物を捕まえようとしたが、なかなか捕まらず、ネズミだけを捕まえることができました。
ネズミは「あなた方の仕事はトウモロコシ畑に種を蒔くことではありません」と言って、二人の父親達が使っていた球戯の道具のありかを教えました。


二人が成長して球戯で遊んでいると、シバルバーの王達がうるさく思って、二人を連れて来いと、部下に命じました。
二人は家の中にトウモロコシを植えて、もしこれが枯れてしまったら、私達は死んだと思ってくださいと、お婆さんに行って出かけました。


シバルバーの部下達は、フン・フンアフプーとヴクブ・フンアフプーの時と同じように、二人を騙そうとしましたが、二人は逆に騙して、シバルバーの部下達をやっつけました。
しかし、とうとうフンアフプーは首を切られてしまい、球戯場に吊るされてしまいました。


ところが、亀がフンアフプーの首の形になり、フンアフプーは再び生を受けました。
二人は球戯場に行き、本当のフンアフプーの首と亀を入れ替えることに成功しました。


シバルバーの部下達は二人を殺そうとして、大きな竈に火を焚きました。
二人は自らそこに飛び込んで一緒に死んでしまいました。
シバルバーの部下達は二人の骨を粉々に挽き、川に投げ捨てました。
しかし、粉はすぐに美しい若者に姿を変わり、元の二人の姿に戻りました。
実は、二人の計画通りでした。


二人は老いぼれた顔つきでボロをまとい、シバルバーの部下達の前に現れました。
そして、家を焼いて戻す手品を見せました。
また、二人が互いを切り刻んで殺しては蘇らせる手品を見せました。
シバルバーの部下達は大変驚いてシバルバーの王達の前に招かれました。


そしてそこでも同様に、二人が互いの心臓を取り出して供犠にして、生き返らせたりしました。
王達は喜んで、自分達を供犠にして生き返らせてくれと頼みましだ。
二人は王達を殺し、供犠にしましたが、生き返らせませんでした。
これを見て、部下達も降参しました。


そして、二人は二人の父親達と話しをすることもでき、彼らを称賛しました。


二人がお婆さんの家に植えたトウモロコシは、二人が竈の火で焼かれた時に枯れてしまいましたが、また、芽を吹き返しました。


最後に、二人は天に昇り、太陽と月になりました。
 

posted by morfo at 23:28| Comment(0) | 番外編(秘儀的物語) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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