2013年02月18日

堕落・救済神話とは

秘儀神話が神的な霊魂の地上への埋没と覚醒を、神の死と復活の物語の中で象徴的に語りました。
これに対して、それを直接的に語る神話が、秘儀宗教の発展と並行してヘレニズム・ローマ期に至るまでに形成されました。

この神話は、神に等しいような「原人間」などの堕落や殺害によって、霊魂が地上の人間として生まれることになったと語ります。
そして多くの場合、最後には霊魂は救われるとする終末の予言がなされます。
本ブログではこれを「堕落・救済神話」と呼びましょう。


この章では、「堕落・救済神話」の背景となった神話(ゾロアスター教)や、類似する神話(ユダヤ、キリスト教)も含めて、順に「堕落・救済神話」の発展(ヘルメス主義、グノーシス主義、ミスラ教、マニ教)を見てみましょう。
これは、古代ペルシャからヘレニズム・ローマ期までの宗教潮流を見ることになります。
 

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2011年05月04日

マニ教とオフルマズドの犠牲

バビロニア生まれの預言者マニが興したマニ教は、ミスラ教を変形した宗教で、グノーシス的傾向を持ち、ヘレニズム・ローマ期の東西交流の最後の総合を示しています。
その神話は「原人間の殺害」をはじめ様々な要素を結びつけられていて、強烈なインパクトを持つものに仕上げられています。
3世紀にバビロニアでキリスト教系グノーシス主義の信者の家に生まれたマニは、ゾロアスター、仏陀、イエスに続く3番目で最後の預言者を名乗って、普遍的宗教の確立を目指しました。


マニ教はゾロアスター教によって迫害されましたが、中央アジアを中心に広がり、ウイグルでは国教となりました。
そして、西方ではカトリックと競合する勢力となり、東方では中国でも受け入れられて「明教」と呼ばれました。
当時、真に世界宗教と呼べたのは、マニ教とミスラ教の2つだけです。
マニ教の神話は次のような物語です。


原初の時、光であり善である「偉大な父(ズルワン)」の世界と、闇であり悪であり物質である「闇の王(アフリマン)」の世界が接して存在しました。
ある時、闇が内紛のすえに境界まで来て光の世界を知ると、光を手に入れたいと思ったので、闇は団結して光の世界に攻撃をしかけました。
それで、「偉大なる父」は「闇の王」を撃退するために「生命の母」を生み出し、「生命の母」が第1の使者である「原人間(アフラマズダ)」を生みました。
「原人間」はその「5人の息子(あるいは乙女)」を鎧として境界線で「闇」と戦いました。
そして、まるで毒を盛るようにして、自分達を食べ物として「闇の王」とその5人の息子に与えることにしました。
こうして、闇は攻撃をやめましたが、光が闇に食べられたことで、光と闇の混在が生まれました。


次に、「偉大な父」は第2の使者として、まず「光の友」を、次に「偉大なる建設者(喜悦)」を、次に「生ける霊(ミスラ)」を、次のその「5人の息子」を生み出しました。
「生ける霊」は「原人間」を闇の世界から光の世界に引き上げまさせました。
ですが、まだ1/3の光のかけらが闇の中に残っていたので、これを救出するために、「生ける霊」は「5人の息子」である天使達に闇の悪魔の体から天地を創造させました。
闇に最も損なわれていない部分からは、太陽と月という光を乗せて運ぶ2隻の「渡し船」と恒星天を作りました。
そして、「偉大な父」は、「第3の使者(ミスラ)」を生み出し、「第3の使者」は12宮の霊である「12の処女」を生み、次に、光を闇から分離して上方の光の世界に運ぶために、宇宙を機械状に組織して回転させました。
太陽は光を放って回転しながら物質から光を抽出します。まず、月が光を1ヶ月集めて太陽に運び、次に太陽は恒星天に運びます。
恒星天も回転して、光を神の世界に運んで解放します。


さらに、悪魔に飲み込まれた光を解放するために「第3の使者」は美しい乙女と青年の姿で悪魔の前に現われました。
悪魔は欲情して光を精子などの形で放出しました。
こうして光を船に乗せて救出しましたが、闇が多く含まれていた部分は地に落ちて植物になりました。
そして、すでに身ごもっていた女悪魔は胎児を生んでこれが動物になって、動物が植物を食べました。
ですが、悪魔達は光を渡さないための最良の策を考えました。
まず、男女の悪魔はこの動物を食べて、2人で交わりました。そして、その子を闇の王が食べることで、アダムとイヴを生みました。
人間の姿は神の姿を真似て作って、人間の中にありったけの光を注ぎました。
人間は人間の姿に魅かれて子供を生み続けることで、光は地上に捕まったままになるのです。


ですが、5人の天使達が光の救出を懇願したので、「生ける霊」達は人間を導くために「輝くイエス(神の子)」を送りました。
イエスはアダムに知恵の樹の実を食べさせました。
人間はイエスよって覚醒され、「知性の化身(ヌース)」が光の霊魂を救いにきます。
そして、彼らは自分自身の本性を認識して救われます。
終末には「光の狩人(ミスラ)」あるいは「大いなる思考」と呼ばれる使者が現われて、世界は火による浄化の末、残っていた光は集められて天に昇ります。
一方、物質と悪魔達は球体の中に閉じ込められて、捨てられます。


マニ教によれば、人間の霊魂は悪神を撃退するために犠牲になった原人間と天使の体の一部である光のかけらです。
そして、肉体を持つ人間は、光を奪われずにおこうとした悪魔のおぞましい行為の結果生まれたのです。
ですが、神はすべての光を救い出そうとします。
マニ教の物語は、霊魂の神性とその死をはっきりと示しています。
マニ教では、星の世界は善神が作ったものですが、惑星と地上世界、人間は悪神に由来すると考える点で、グノーシス的傾向があります。

 
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ミスラ教と原人の殺害

3Cにはシリアでヘレニズム的な影響の中で、ミスラの新しい神話がまとめらました。
この時まではズルワン主義やゾロアスター教のミスラ派と言える潮流が、新たに「ミスラ教」と言えるものになったのです。
そして、さらにミスラ教は秘儀宗教化して「ミトラス教」となってローマ帝国内にも広がりました。


ミスラ教の神話には様々なヴァージョンがありますが、ここでは12星座に対応させて編集されたものを紹介しましょう。


神話は「山羊座(カプリコーン=ヤギ魚座:バビロニア、メディアでの星座の別名、本来の名前をカッコ内に書きます)」の時代から始まります。
霧の海のソフィアにあった卵からズルワンの光を受けてミスラが生ます。
ミスラには黄金の龍が巻きついていています。
この龍は7羽の火の鳥に変化して飛び立ち、1羽が迷ってしまいますが、ミスラが笛を吹いて呼び戻します。


「水瓶座(巨人座、流水座)」の時代には、ミスラが天神と地神にマズダ、アパム・ナパート、アーリマンの3兄弟を生ませ、マズダが主権を与えられます。


「魚座(大きなつばめ座)」時代には、マズダがミスラをモデルに、アパム・ナパートから生命の種子をもらって原人間を創造します。
不満を持っていたアーリマンは原人間を殺し、聖牛を連れ去ります。
原人間は光のかけらとなって地上に落ちます。
そして、アーリマンは寒さによってあらゆる生物を死にたえさせ、宇宙を汚します。
ですが、マズダがアーリマンを地下に追い落とします。


「牡羊座(貴公子座)」の時代には、ミスラが洞窟に降り、太陽神ソルをして暖かくさせます。


「牡牛座」の時代には、ミスラが聖牛を連れ戻し、供犠にして、生命の水のような血を宇宙に流します。


「双子座」の時代には、その血が灰の上にこぼれることで双子のスラオシャとラシャヌが生まれます。
前者は血を水瓶に集めて生命を養い、後者は死後の魂を裁くことで、生死の循環を正しました。


「蠍座(北門座)」の時代には、ミスラは血を水瓶に集めて月に運び、月の女神がそれで宇宙を浄めました。
また、ミスラは光のかけらを集めて、それを入れて最初の人間の夫婦や動植物を創造しました。
最初の夫婦は双子座の時代に創造されたという説もあります。


「獅子座(犬を連れた主人座)」の時代には、ミスラは太陽から光を注ぎ、地上の植物を成長させ、人間の夫婦に自我を芽生えさせました。
自我が芽生えたことで欲望も生まれました。
「犬を連れた主人」とはアーリマンのことで、欲望にアーリマンが働きかけています「乙女座(麦穂座)」の時代には、ミスラは人間の夫婦に反省心を植え付け、豊かに実った麦穂を与えました。


「天秤座」の時代には、ミスラは2人に聖なる言葉を与え、これによって判断力、知性が生まれました。


「蠍座」の時代には、大魔母のアズが最初の人間の男を誘惑して汚します。
その後、人間の子孫を作っていきますが、子孫達も汚れています。
ミスラは地下に降りてアーリマンを改心させます。
アーリマンは第1の天使に復帰して人間の魂の浄化を守護すると誓います。


「射手座(遠くを見る者座、弓座)」の時代には、ミスラが地下に降りている間に干ばつが起ったので、ミスラに祈ると、ミスラは地上に戻って岩を射て泉を湧かせました。
人間はミスラへの強い信仰を持つようになりました。


一巡にして「山羊座」の時代には、ミスラはマギ達にアーリマンが天使に復帰したことを秘密として封印させ、パンとワイン(聖牛の血)の聖餐を行いました。
そして、ミスラは太陽に戻って守護しました。


他のヴァージョンの神話では、アーリマンは改心せず、この後、最終戦争をいどみます。この時、ミスラが白馬に乗って現れてアーリマンと戦います。
ミスラは善良な人間などの光の共達を宇宙の外へ避難させ、アーリマンを撃退します。
しかし、一定の時間が経過すると、宇宙が業火につつまれて燃えつきます。
そして、また新たに宇宙が作られます。これが永遠時間の神ズルワンが定めた宇宙の循環する運命なのです。


12星座版の神話では、人間の霊魂は殺害された原人間の一部である光のかけらですが、悪神との混血なのです。霊魂の神性とその死がはっきりと示されています。
もう一つ、ゾロアスター教との違いは、マズダと兄弟で堕落天使的な存在のアーリマンが、天使に復帰して人間を守護していることです。
悪神的要素は善なる方向に転化できることを示していてとても興味深いものです。

posted by morfo at 07:52| Comment(0) | 堕落・救済神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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