2011年04月10日

ディオニュソス神話解釈

一般に知られるディオニュソスの性質は次のようなものです。

彼は突然どこからともなく現れ、人々を熱狂させ、踊らせ、時には狂気におとしいれて動物や人を引き裂かせます。
また、ブドウの樹を1日で大きく成長させたり、地からブドウ酒を噴出させます。
成人したディオニュソスは、本当の顔を見せずに髭をはやした男の仮面をつけています。
つまり、ディオニュソスは意識的な秩序にとってまったく異質で潜在的な力そのものであって、その突然の噴出を本質としています。
心臓と男根は、意識と無関係に躍動して体液を噴出させる点で、ディオニュソス的存在なのです。


先に紹介したディオニュソスの神話には様々なテーマを見つけることができます。

ディオニュソスが「若芽」、「大猟師」とい異名を持ち、男根的存在だということからも分るように、狩猟・採集文化の神話をベースにしたテーマがあります。

また、「成人イニシエーションの死と再生」、「人間と神の違い」、「女性の救出」、「不死の獲得」といったテーマが読み取れます。

ですが、秘教的な解釈からすると、ディオニュソスの両神話では、「熱狂(狂気)」、「八つ裂き」、「女性」という繰り返し現れる3つのテーマが重要です。

小ディオニュソスは、神ゼウスが人間に生ませた子ということで、物質的・地上的なものに捕らわれた人間の霊魂の中に眠る神性を象徴します。
そして、セメレの死とゼウスによる出産は、霊魂が地上的なものの破壊の上で神性を獲得することを暗示させます。

そして、ディオニュソスは養母によって女性達の中で育ちます。
この「乳母達にかしずかれた箕の中の児童神」というディオニュソスの姿は、次の項で紹介するエレウシス秘儀での「イアッコス」に相当します。

そして、ディオニュソスは女神ヘラによって日常的な人間性を喪失した狂気におとしいれられ、女神キュベレによってそれを神的な熱狂に方向づけられます。
つまり、ディオニュソスは神性に向けた死と再生のイニシエーションを受けたのです。
これに対して、ヘラによって狂気にされた養母達は、ただ地上的な意識的秩序の象徴である息子を殺してしまうだけです。

その後、ディオニュソスは神的な熱狂を女性信者達と伝えて、共に伝道します。
そして、迫害者や非難する者達を狂気におとしいれ、息子を殺させ、本人をも八つ裂きにさせます。
ディオニュソスはここで、アッティス神話のキュベレやヘラ同様に地上性を破壊する力として現れます。

そして、最後には、自らの神的な力によって、セメレとアリアドネという冥界に捕らわれた女性達を不死なるものに高めます。

ディオニュソス(やヘラ)による狂気や熱狂、八つ裂きには、「地上性の破壊」と「神性との交流」の2つの意味を持っているのです。
ディオニュソスがもたらすものは、最終的には人を神性へ向かわせるものなのですが、そこには暗黒的な要素が含まれていて、それが地上性を破壊する力として働いているのです。

ディオニュソスには猟師という名前があって、彼はライオンやヒョウに変身します。
ですがもう一方で、ディオニュソスは牡牛にも変身しますし、追われたり八つ裂きにされたりもします。
つまり、ディオニュソスはシャーマン同様に、狩る側であると同時に狩られる側でもあるという2重の存在なのです。

またこのことが、神話の中の殺戮が神性の破壊とともに地上性の破壊を意味して、狂気が神的なものであると同時に獣的で、それらが救済的であると同時に懲罰的であるという2重性と複雑に共鳴しています。



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2011年04月09日

小ディオニュソス神話

ディオニュソス神自身は、クレタ島のミノワ(ミケーネ)文明に由来する古い神で、ギリシャにもBC20C頃には根付いていました。
アポロンの本拠地デルポイにもディオニュソスの聖地があります。
デルポイは、アポロンがやってきて女神から主神の座を奪いましたが、ディオニュソスは豊穣女神の息子として、アポロンが来る前からいたのでしょう。

しかし、その一方で、ギリシャ神話の中では、ディオニュソスは最後に現れた神とされ、彼がブドウ酒を創造することで神々による世界創造が完成したとされます。
ディオニュソスは、ギリシャに再到来したのかもしれません。
最初はその非ギリシャ的な性質のため迫害を受けたようですが、最終的にはゼウスの主権を引き継ぐべき存在という重要な神として受け入れられました。

また、ディオニュソスにはたくさんの異名があって、その代表的なものは「バッコス(=若芽)」や「ザクレウス(=大猟師)」です。

ディオニュソスの神話には、2系統の神話があります。
一般に知られている「神から生まれた人の子、小ディオニュソス」の神話と、オルフェウス教徒の秘伝による「神々の子、大ディオニュソス(ザクレウス)」の神話です。
ディオニュソス秘儀が基づく神話は、前者の神話です。
この項では、小ディオニュソスの神話を紹介しましょう。

各地での様々なエピソードがありますが、その中からいくつかを拾ってみました。


ゼウスが人間であるカドモス王の娘セメレに、ディオニュソスを身ごもらせました。
嫉妬したヘラがセメレを騙して、ゼウスに神の姿のままでセメレと会うように頼ませたので、セメレはゼウスの電光に打たれて死んでしまいました。
ゼウスはセメレの胎内からディオニュソスを救い出して、自分の腿に縫い込んで隠しました。
ゼウスはディオニュソスを生み、ヘルメスを介してセメレの姉妹達に預けて女の子として育てさせましたが、ヘラが彼女達を発狂させて、自分達の息子達を殺させてしまいます。
ゼウスは今度はディオニュソスを仔山羊の姿に変えてニュサのニンフにこっそりと委ねました。

ディオニュソスは成長して、ブドウ栽培とブドウ酒の製法を創始して、ブドウ酒の神となりました。
ヘラはこれに気づいてディオニュソスを狂わせました。
ディオニュソスはフリギアで大女神キュベレ(一説ではレア)によって正気に戻されて、秘儀を伝授されました。

ディオニュソスは女信者達を引き連れて、トラキア、ギリシャへとやってきて伝道しました。
ですが、ボイオティアの王ミニュアスの娘達はディオニュソスの信者を非難しました。
ディオニュソスは乙女の姿になって彼女達を説得しましたが、聞き入れませんでした。
それでディオニュソスは牡牛、ライオン、ヒョウの姿に次々と変身しました。
さすがに彼女達も驚いて、供儀として息子の1人を八つ裂きにした後、山に入って狂気となって鳥に変身しました。

また、トラキアではリュクルゴス王(「狼人」という意味)がディオニュソスを迫害してその乳母を追い回したので、驚いたディオニュソスは海に身を投げました。
ですが、ディオニュソスは王を狂気におとしいれたため、王は息子を切り殺してしまいました。
そして、王も家来達によって八つ裂きにされました。

また、ディオニュソスはその途中で、インドにまで遠征して諸国を征服し、凱旋しました。

その後、ディオニュソスは道案内人プロシュムノスの助けを借りて、冥界にいた母のセメレを救い出しました。
ディオニュソスはプロシュムノスのためにイチジクの木で男根を作ってそれを立てました。

そしてディオニュソスは、セメレと共に天に昇ってオリンポスの神の仲間入りをしました。

また、ディオニュソスはナクソス島に置き去りにされていたアリアドネを妻として、彼女にも不死の神性を与えて女神の仲間入りをさせました」

「小ディオニュソス」の神話では、ディオニュソスは2度生まれ、さらに狂気から再生します。

ディオニュソスという名前には「2度生まれた神」という意味があります。

「大ディオニュソス」の神話と合わせると、ディオニュソスは「3度生まれた神」となりました。



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大ディオニュソス神話

ディオニュソスの神話には、2系統の神話があります。
一般に知られている「神から生まれた人の子、小ディオニュソス」の神話と、オルフェウス教徒の秘伝による「神々の子、大ディオニュソス(ザクレウス)」の神話です。
オルフェウス秘儀が基づく神話は、後者の神話です。
この項では、この大ディオニュソスの神話を紹介しましょう。


「大女神デルメルが娘のペルセポネーを洞窟に隠していましたが、ペルセポネーが両親のためにマントを織っている時に、ゼウスがヘビの姿で近づいてペルセポネーと交わったため、ペルセポネーはディオニュソスを生みました。

ディオニュソスは玩具(サイコロ、ボール、コマ、黄金のリンゴ、うなり板、羊毛)で遊んで育ちました。
これに嫉妬したゼウスの妻ヘラが、ティタン神族にディオニュソスを襲わせました。
ティタン達は顔を白く塗って近寄り、ディオニュソスを八つ裂き(七つ裂き)にして、これを大鍋で煮て食べました。
(一説ではこの時、ディオニュソスは角を持つ牡牛の姿だったといわれています。)

これにゼウスは怒って、ティタン神族を電光で撃ち殺しました。
人間はその灰から作られました。
あるいは、電光に撃たれたティタン神族から立ち上った蒸気が凝固したススから作られたとも言われます。

デルメルがディオニュソスの四肢の灰を集めると、その灰からブドウ樹が生えました。

ですが、ディオニュソスの心臓だけは助かったので、ゼウスがこれを地母神ヒプタ(あるいはアテナ)に頭上の篭の中に隠して運ばせて引き取りました」


dionusos.jpg

*ディオニュソスとその児童神としての分身のイアッコス

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