2011年04月16日

オルペウス神話

オルフェウス(オルペウス)は、トラキア出身と言われる伝説的人物です。
彼はギリシャのオルフェウス教団、オルフェウス秘儀の開祖的存在です。

オルフェウス派は独自に神話を作りました。
オルフェウス秘儀も、オルフェウス派独自の「大ディオニュソス」の神話を元にしています。

ですが、オルフェウス自身に関する伝説、神話が伝えられています。

彼はアポロンの子とも言われていて、アポロンから譲り受けた竪琴によって人や動物を魅惑します。

オルフェウスは死んだ妻を助けるために冥界に下り、竪琴で冥界の存在を魅惑して妻を連れ帰ろうとしますが、途中で後ろを振り返ってしまったために失敗します。

落胆したオルフェウスは女性を避けて少年と暮らして、冥界から持ち帰った秘儀を教えました。

その後、オルフェウスはディオニュソスの女性信者に引き裂かれて死に、彼の頭部は竪琴に釘で打ちつけられて、オシリスの遺体と同じように川に投げ込まれました。
これはレスボス島に流れついて、オルフェウスの首はディオニュソス神殿に埋葬されて、竪琴の方はアポロン神殿に保管されました。

一説では彼の首はその後も神託を下しました。

オルフェウスは、「小ディオニュソス」と違って妻の救出に失敗します。
これは、イザナギの神話と同様の古い神話であって、オルフェウス派が創作したものではないでしょう。
オルフェウスの神話・伝説には、オルフェウス教団の神性を求める思想の要素がありません。
ですから、これらの神話・伝説がオルフェウス教団自身が信じていたものだったのかは疑問です。



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2011年04月14日

エレウシス秘儀解釈

ペルセポネーを失って悲しむデルメルは、「黒いデルメル」、「復讐のデルメル」とも呼ばれます。
アルカディアのペネオスで行われていた奥義秘儀の時に、司祭は忿怒の仮面をつけたと言われています。
デルメルは無理に犯されるように聖婚が行われます。
これは死ぬことであり、地上的な姿が否定されることを象徴します。


また、1/3の期間に冥界にいるペルセポネーも「黒いペルセポネー」であると言えます。


2人の冥界の女神としての黒い女神は「ブリーモー(恐怖を呼び起こす女神)」と呼ばれます。
この冥界の地母神的な存在であるブリーモーが魂を復活させるのです。
秘儀の中では女陰が示される場面もあったと言われていますが、これは地母神の死と再生の象徴です。
狂乱的でなく瞑想的と言われるエレウシス秘儀には、こういった女神の「暗い」側面、狩猟・採集文化以来の伝統があるのです。


聖婚の後、秘儀では「ブリーモーがブリーモス(恐怖を呼び起こす少年神)をお生みになった」と宣言されます。
実際に一人の少年が少年神の役を果たしました。
少女神のペルセポネーはすでに存在するので、少年神の誕生も宣言されたのでしょう。


オルペウス教徒の伝える神話によれば、ケレオスの館でイアンベではなくバウボ(腹の意)がデルメルに恥部を露にすると、衣装の下から笑っている少年神の「イアッコス」が見えたので、デルメルも笑い心が和んだことになっています。
少年神のイアッコスはデルメルとゼウスの息子と考えられています。
また、別の神話によれば、デルメルは人間との間に豊饒の角を持つ少年「プルートル(富)」を生みました。


この神話は、狩猟・採集文化の要素と、畑で行われた豊饒の聖婚儀礼を示しています。
秘儀で生まれた少年神は「クーロス」と呼ばれたり、あるいは角を持つディオニュソスであるとする者もいました。


発見されるペルセポネーは「その名を口にすべからざる少女」と表現され、彼女は2つの顔と4つの目を持っていたと考える者もいます。
良く知られた別の神話によれば、デルメルはポセイドンに牝牛の姿で逃げる途中に犯されて娘を生んでいます。
この娘の名前は「女君主」とのみ呼ばれ、その本当の名前は秘儀伝授者にしか明かされていません。
「その名を口にすべからざる少女」は「女君主」と似た存在です。


奥義秘儀で示されたという「刈り取られた麦の穂」は、農耕文化の宗教的核心にあたる復活する穀霊、つまり、死して再生する霊魂の神性を象徴します。
秘儀参入者は自らをこれと同一視するのでしょう。
この神性は性別を越えたものであって、復活するペルセポネーでありイアッコスであり、時には異形の姿をした豊饒の力を持つのは地下的存在なのです。

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エレウシス秘儀

エレウシス秘儀は参入者に「死後の祝福」を約束しました。
後のオルペウス教団やピタゴラス教団は、輪廻からの解脱をもとにエレウシス秘儀を解釈しましたが、エレウシスの秘儀自体は輪廻思想を持っていなかったでしょう。
ギリシャの伝統的な死後観では、普通の人は死後に地獄のような冥界に行きつきますが、一部の英雄達は海の彼方の至福者の島か冥界にあるエリュシオンの野に行きます。
エレウシス秘儀の言う死後の祝福は、エリュシオンの楽園に行くことだったのでしょう。


デルメルがデモポンを不老不死の神のようにしようとしたがそれを果たせなかった逸話は、デルメルの力と人間の不死への可能性とを示し、また、人間の無理解がそれを妨げていることを現わしていいます。
これによって、秘儀の意義を語っているのでしょう。ちなみに、火は地母神が与える生命力の象徴であって、麦を焼いてパンにするものでもあります。


エレウシスの秘儀には、アテナイ近郊のアグライで毎年春に行われる小祭と、アテナイとエレウシスで毎年秋の種蒔きの時期に8日間で行われる大祭がありました。
そして、大祭に行われる大秘儀の最後には、奥義秘儀が行われました。
またこれ以外にも、大祭と同時期に女性だけで秋に行われるテスモフォリア祭など、いくつもの祭りがありました。


小祭では、払清式、神の秘名開示、秘跡の聖句伝授、聖伝承の朗唱、大物忌み、ハッカ麦水とパンの聖餐、聖物に触れるなどの準備をへて、小秘儀への参加が許されました。
これはペルセポネーに関するものでした。


大祭の公の祭儀では、1日目には、エレウシスから聖物がアテナイに運び込ました。
聖物が何かは分かりませんが、女陰か男根の象徴だと推測されます。

2日目には、参加者は仔豚を海で清めて供犠として捧げました。
仔豚は麦の豊饒をもたらすために各地で捧げられていました。

3日目には、魚が供儀として捧げられ、また、王とその妻が大供犠を行いました。

4日目には、松明リレーの競技が行われました。


5日目には、少年神イアッコスの像(後述参照)と聖物を持つ女司祭を先頭にした行進がアテナイからエレウシスの神殿まで行われました。
司祭は死者の象徴であるミルテの枝を持ち、参入者は頭を黒く覆って、男性は水差し、女性は明りと麦の種を持って歩きました。
そして、海水で身を清めた後、ペルセポネーを探し歩いたデルメルを模して、夜には、松明を持って海岸を歩きました。また、舞踏が捧げられました。


6日目には、エレウシスで再度仔豚が海で清められて供儀として捧げられ、大秘儀が始められました。
大秘儀には小秘儀をへたギリシャ語を話せる者は誰でも参加を許可されました。
大秘儀はペルセポネーの探索と発見がメイン・テーマになっていました。


7日目には奥義秘儀が行われ、この時、光に満ちた中で何物かが示されたようです。

8日目には、死者に対する儀礼と献酒が行われました。

9日目には、アテナイに戻りました。


大秘儀の実体は不明ですが、以下のようなテーマの順に進んだと想像されています。
まず、「ペルセポネーの略奪」、そして、「ペルセポネーとハデスの聖婚」、「デルメルの悲嘆と探索」、「デルメルとゼウスとの聖婚」、「ペルセポネー発見と少年神の誕生」、「デルメル(=ペルセポネー=イアッコス)との合一」です。


参入者は男性であっても、デルメルを模して進みます。
まず、断食をし、幻覚作用のあった麦ハッカ水のキュケオンを飲みます。
そして、ペルセポネーの探索のために冥界に降りていきます。
世界の中心だと言われるエレウシスの聖所プルトニオンは、古くは洞窟儀礼が行われた場所で、地下への入口があったのでしょう。
ですが、秘儀では実際に地下洞窟や地下室に降りたという証拠はありません。参加者は衣服を抜いだり、目隠しをしたりして、
冥界とされる暗い部屋を進むのでしょう。冥界の川を越えたり、審判と罪の浄化を受けたりしたかもしれません。


また、デルメルがゼウスによって暴力的に犯されるという聖婚が、女性司祭と男性司祭によって行われたとも言われます。
そして、少年神の誕生、ペルセポネーの発見、光の部屋で最奥義を開陳が行われました。
これは、刈り取られた麦の穂が無言で示されたのだという説もあります。
少年神とぺルセポネー、麦の穂はどれも同じく、復活する魂です。


その後、新しい衣服に着替えて、地上へと戻ります。
そして、「雨よ降れ、受胎せよ、実り豊かであれ」という言葉と共に、2つの独楽形の容器に入れられた水東西の方向にひっくり返されました。
これは農耕文化の天地の聖婚の儀式を思わせますが、デルメルとゼウスの合一の自然における現われと考えられます。

このようにエレウシスの秘儀では、神話=麦霊の循環に重ねて、人間の霊魂が死んでから神のもとに至る旅を、あらかじめ体験させるという側面があったのです。
ですから、エレウシスの秘儀は秘儀参入者に対して、死後の祝福を約束したのです。


 

posted by morfo at 23:27| Comment(0) | 秘儀神話と秘儀宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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