2011年04月17日

イシス=オシリス神話解釈

無数に存在するエジプトの神の中でも最も幅広く信仰されていたのは、農業とともにシリアから来た、死して復活する神オシリス(エジプト名「ウシール」)です。
オシリスは穀物神であり精子としてナイルに水をもたらす豊穰神であり、冥界神です。

そして、イシス(エジプト名は「アセト」で「座席」の意味)は穀物やナイルの水を受け止める大地の母神であり、ナイルの増水と太陽の上昇を告げるシリウスの女神であり、復活の魔術の神です。


また、ホルスは鷹神であり天空神であり、また地平線を昇降する太陽神でもありました。
同時に、豊穰神であって、砂漠と不毛の神セトと対立しています。


オシリスやイシス、ホルス、セトをめぐる神話は、古代エジプトには様々なものがあります。
ここに紹介したのは基本的にはギリシャの作家プルタルコスが『イシスとオシリス』で紹介したものです。
ヘレニズム・ローマ時代に広がったイシス秘儀は、おおむねこの神話をもとにしています。
この物語は様々な神話を結びつけて1つにしているようで、これまで紹介してきた様々なテーマが含まれています。
デルメルの神話と類似した部分がありますが、何らかの影響関係があったものと考えられます。 


オシリスの死と再生には、「穀物神の死と再生」、あるいは穀物に生命をもたらす「ナイル川の水かさの増減」、「にせの像に捕らわれる」、「八つ裂きにされて埋められることで創造を行なう神」、「地上と地下、生と死の分離」といったテーマを読み取れます。


一方、イシスの行動には「人間の不死獲得の失敗」、「隠れた豊穣神」、「怒れる母神」、「男性神を助ける女性豊穰神」、「男性神を裏切る女性豊穰神」といったテーマを読み取れます。


また、ホルスのセトとの戦いには、成人のプロセスの「龍退治」、「母殺し」、「豊穰神と不毛神の戦い」のテーマを読み取れます。


秘儀宗教としてのイシス秘儀では、オシリスは人間の霊魂の本質である神性を象徴します。
オシリスの死は霊魂が地上に捕らわれて生まれることによって、その神的な部分が殺されることを意味します。
オシリスの男根が失われたことは、彼が地上に復活しないことの説明でもありますが、アッティスの去勢と同様の解釈もできます。

ホルスはオシリスとの関係ではその復活する神性で、エレウシス秘儀におけるイアッコスや復活するペルセポネーと同様の存在だと解釈できます。

さらに、地上でのセトとの闘いで失う右目は、心理的には意識や思考の力と考えられますが、秘儀的な解釈ではやはりこれも地上性の中に埋没した神性を現わしていて、ヒッタイトの嵐神の龍神退治の神話と同じテーマです。


イシスはデルメルと同様の存在ですが、悲しみによって不毛をもたらすことなく、見ずからオシリスの復活に尽くす点で、より優和な存在として親しまれました。
アプレイウスによれば、イシスの姿は次のように描写されます。
イシスは豊かな長い巻き毛を持ち、額の上に輝く月をつけて、毒蛇と小麦の穂をつけた様々な花の冠をかぶり、様々な色に変化する衣服を着て、満月と星々をつけた黒いローブをかけています。
そして、右手にはシストラムという音を出す玩具を持って、左手からは舟形の長方形の容器をぶらさげ、シュロの樹の葉で織った靴を履いています。
この他にも様々な姿のイシスが考えられましたが、その姿はヘレニズムの女神としての様々な象徴性を示しています。


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イシス=オシリス神話

エジプト起源のイシス神はローマ世界で最も広く崇拝された女神です。
ヘレニズム・ローマの文化的中心地がエジプトのアレキサンドリアだったことから、イシスは文化的な交流の結果きわめて普遍性のある女神になりました。
それに、キュベレのように残忍な要素持たないために広く広がりました。

イシス=オシリス秘儀は古代エジプトの儀礼とエレウシス秘儀を引き継いだ形で、紀元前3Cにアレキサンドリアの国家神セラピスの神殿の祭儀として再創造されました。
まず、イシス=オシリス秘儀のもとになったエジプトのオシリス神話を見てみましょう。

「オシリスは妹のイシスと結婚してエジプト王となり、耕作、法律、神々の尊崇を教え、国は繁栄します。
弟でジャッカルとワニを合わせたような神セトがこれを妬んで、宴会でオシリスと等身大の棺を作り、これにピッタリの者にこれを与えると言いました。
オシリスがこれに入るやいなや、釘を打ち、棺をナイルに流しました。


棺は海を渡ってフェニキア(レバノン)のビブロスのイチジクの木の根元に流れ着きました。
イチジクの木が棺を中に包み込んで大きく育つと、ビブロスの王はこれを使って宮殿の柱を作りました。イシスはこれを知り、人間に身をやつして喪服を着て髪の毛を半分に切り落として、ビブロス宮殿へ行きました。
彼女は歓迎を受けたので、王子の乳母となりました。イシスは王子に彼女の指をしゃぶらせ、毎夜ツバメに変身して王子を不死にすべく火の上にかざしました。
ですが、王妃のアスタルテがこれを誤解して止めるように訴えたので、王子は不死となることができませんでした。
イシスは正体を明かして、柱を切って棺を見つけ、オシリスの死を改めて嘆くと、その泣き声で王子は死んでしまいました。
イシスがエジプトに帰る時に、ビブロスの王の長男が同伴したましが、怒れるイシスが彼を振り返った時と、彼も死んでしまいました。


エジプトに戻ったイシスは魔法によってオシリスの子を鷹神のホルスを孕みました。
また、棺をブートーの沼地に隠しました。
ですが、セトがこれを見つけて、オシリスの遺体を14に切り刻んでバラバラに撒いてしまいました。
イシスはミイラ作りの犬神アヌビスとネフティスの助けを借りて、13の部分を取り戻しましたが、男根だけはナイルの魚に食われてしまいました。
イシスは男根の模造を作って、油を塗るなどしてオシリスを復活させました。
こうして、オシリスは現世には戻れませんでしたが、霊界に留まってその王となりました。


セトはホルスが生まれることを恐れてイシスを捕まえましたが、知恵と朱鷺の神トートの助けで逃れて、ブートーの沼地でホルスを生みました。
セトは毒蛇の姿でホルスに忍びより噛んだため、ホルスは半死状態になりました。
イシスがホルスを助けてくれるように神々に訴えると、「ホルスが治るまで闇と不毛が続く」とトートが宣言したため、ラーがそれを避けるためにホルスを直しました。


その後、オシリスの魂は育ったホルスにセトとの闘い方を教えて、ホルスはセトと闘いました。ホルスは右目を引き裂かれましたが、トートがこれを元に戻しました。
ホルスはセトを鎖で縛ってイシスの元に連れて行きましたが、イシスはセトを哀れんで逃がしてしまいました。
ホルスは怒ってイシスの頭から王章をもぎ取りました(イシスの首を切ったとも言われています)。その後、ホルスはセトと2度の闘いの末、セトを打ち負かしてオシリスの後継者となりました」
 
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オルペウス秘儀

紀元前6C頃のギリシャの世界観、つまりホメロスに代表されるオリンポスの宗教によれば、人間と神は区別され、死後は冥界でみじめに暮らす、というものでした。
こういった考え方に対して、オリエントの神秘主義的な世界観を引き継いだ、神的なものを積極的に求める宗教・思想運動が起こりました。
秘儀宗教やプラトンに代表される多くのギリシャ哲学はこの流れにあります。
トラキア出身と言われる伝説的人物オルフェウス(オルペウス)も、この潮流の象徴的存在です。
彼は、ルネサンス、ロマン主義など、霊的なものが重視される時代には、常にその象徴として復活しました。

オルフェウスの存在は神話化されていて、その歴史的な実在性に関してははっきりしません。
オルフェウスの信仰は、1つの教団というよりも思想運動としての広がりを持ったもので、彼らによってギリシャの宗教思想は大きく変化しました。
オルフェウス関連文書の多くは、ピタゴラス教団の者が書いていたようです。
オルフェウス派の思想は、エンペドクレス、ピタゴラス、プラトンらの哲学者に受け継がれました。

オルフェウス派にとって、最も重要な神はディオニュソスです。
オルフェウス派は、独自の「大ディオニュソス」の神話を持っていて、これがオルフェウス派の思想、秘儀の根本にあります。

一般的な解釈をすれば、大ディオニュソスの神話の、「八つ裂きにされ大鍋で煮られる」はシャーマンのイニシエーションそのものですし、遊び道具や「顔を白く塗る」といったテーマは成人式のイニシエーションを思わせます。
また、「死体から植物を生む神」は栽培文化の神話のテーマです。

ですが、オルフェウス秘儀にとって重要なのは、この神話は、人間はディオニュソスに由来する神的な部分と、ティタン神族の神の殺害という原罪に由来する部分がある点です。

オルペウス派は、ディオニュソスに由来する神的な部分を知らない人間は、ペルセポネーの恨みを受けて、惨めに輪廻を繰り返すと考えました。
ですが、それを記憶する人間は、オルフェウス派の禁欲的生活と秘儀を体験することで、死後にペルセポネーの元で神的な不死の生を送ることができるのです。

オルフェウス派は、ティタンが行ったような殺生を否定します。
それゆえ、肉食や自殺も否定します。
このことは、生贄を行うオリンポスの宗教を否定することになり、また、秘儀で八つ裂きや生肉喰いを行うディオニュオス秘儀を否定することにもなります。
オルフェウス派は、明確に、反オリンポス宗教、反ディオニュソス秘儀の立場にあります。

オルフェウス派の秘儀については、はっきりとしたことは分かりません。
ですが、秘儀では、死後の冥界下りを予習的に体験し、進むべき道を教えられます。

冥界の道は、間違わず、そして落とし穴に落ちたりせずに進まなければいけません。
「冥界の館」の左右に泉があって、右の泉の水を飲まなければいけません。

右の泉の水は「記憶(ムネモシュネ)」の沼から流れる水で、それを飲むと、自分の魂の本質が神に由来することを記憶した状態で、次に進めます。
ですが、左の泉の水は「忘却(レテ)」の沼から流れる水で、それを飲むと、自分の魂の本質が神に由来すること忘却した状態で、地獄に送られて、千年後にその体験も忘れて地上に転生してしまいます。

次に、冥界の監視者に対しては、「我は大地と星輝く天の子なれど、我が属するのは天の種族である」などと語る必要があります。
これによって、自分の魂の本質が神に由来すること記憶していることを示すためです。

そうして「女主人の懐」と呼ばれるペルセポネーのもとに至ると、彼女による確認を経て、ペルセポネーの杜、神聖な草原に至って、神的な生を永遠に生きることができます。

秘儀を終えると、冥界で取るべき行動を記した金版(オルフェウスの金板)を受け取ります。

posted by morfo at 00:51| Comment(2) | 秘儀神話と秘儀宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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