2011年11月07日

ナーローパの生涯

インドの後期密教の「マハー・ムドラー」と呼ばれる教えの成就者であり、チベット仏教のカーギュ派の聖者ミラレパの、グルのグルに当たるのが、ナーローパです。
彼はナーランダー大学の大僧院長に登り詰めたエリートのインテリ僧でした。
しかし、その立場を捨てて、本当の悟りに導いてくれるグルを求めて旅に出たとされています。


ナーローパの伝記の、グルを求めた旅までの部分を紹介します。
この部分は、グルを求めた旅が、求道の秘儀的物語となっています。
ナーローパを探すことが、真理・悟りを求めることの象徴となり、最後にはナーローパを探すことを捨てることで、真理に到達します。


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ある日、ナーローパが太陽に背を向にして、文法と認識論と精神的訓練と論理学の読書をしていると、醜い老婆が現れて「理解しているのは言葉か意味か?」と聞いた。
ナーローパが両方理解していると答えると、老婆が泣き出して「あなたがウソをついているのが悲しい」と語った。
ナーローパが、「では誰が意味を理解しているのか」と聞いた。
すると、「私の兄弟です教えが欲しければ自分で探して教えを乞いなさい」と答え、虹のように姿を消した。
ナーローパはそのグルのティロパを探して、東に向かった。


岸壁と川の間の狭い足場にグロテスクな姿をした病気の女が道をふさいでいた。
ナーローパが女を飛び越えて行くと、女は虹の後光をまとって空中に舞い上がり語った。
「究極の実在の中では一切は同一となる。
習慣的な思考に束縛されていて、どうしてグルを見つけられようか。」
ナーローパは気を失ったが、回復してから反省し、誰でも会う人には、教えをもらうように接するようにした。


その後、狭い路上で害虫がたかって悪臭を放つ雌犬に会った。
ナーローパが飛び越えると、その犬も虹の後光をまとって空中に舞い上がり語った。
「慈悲の心を育てることなくして、どうして自分を受け入れてくれるグルに巡り合えようか。」
ナーローパは気を失ったが、回復して、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパはある男に「ティロパを見かけたことはありませんか」と尋ねると、「俺の両親の頭を逆さにひっくり返すのを手伝ってくれたら教えるよ」と答えた。
ナーローパは悪党に加担はできないと考えると、その男は虹の後光をまとって空中に舞い上がって語った。
「自我に執着する頭蓋骨を無我と空性の木槌で砕かないのであれば、どうしてグルを見出せよう」。
ナーローパは気を失ったが、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは、人間の死体から腸を引き裂き切り刻んでいる男に出会った。
ティロパを見かけたことはないかと尋ねると、その男は、手伝ってくれたらティロパの居所を教えると言ったが、ナーローパはやはり手伝わなかった。
すると、男は虹の光の中に入り、こう語った。
「輪廻の束縛を絶ち切らないのであれば、どうしてグルを見出せようか」。
ナーローパは気を失ったが、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは、川岸で生きた男の人の胃を切り開いて、湯で洗っている悪者に出会った。
ティロパを見かけたことはないかと尋ねると、その男は、手伝ってくれたらティロパの居所を教えると言ったが、ナーローパはやはり手伝わなかった。
すると、男は空中の光の中に立ち現われて、こう語った。
「輪廻を洗い清めることなく、どうしてグルを見出せようか」。
ナーローパは気を失ったが、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは大王の都に辿り着いた。
大王にティロパを見かけたことはないかと尋ねると、大王は、自分の娘と結婚したらティロパの居所を教えると言った。
ナーローパは結婚して長い時を過ごしたように思えたが、彼を去らせたくないと思った大王は、娘を取り戻した。
すると、ある声が聞こえてきた。
「魔術にだまされていないか? 
邪悪な生活に浸っていて、どうしてグルと出会えようか」。
ナーローパは我を取り戻して、また、祈りを捧げながら旅の途についた。


ナーローパは、猟犬の引き連れ、弓矢を手にした黒い肌の男に出会った。
大王にティロパを見かけたことはないかと尋ねると、男は、この弓矢で鹿を殺したら居所を教えると言った。
ナーローパが断ると、男は次のように語って、姿を消した。
「私は、思いの定まらぬ鹿を、欲望から解き放たれた矢で殺した。
明日は湖に魚釣りに行くとしよう」。
ナーローパは気を取り戻して、また、祈りを捧げながら、湖にやってきた。


その近くで、畑を耕し、畑のあぜにいる虫を殺して食べている二人の老人に会った。
彼らにティロパを見かけたことがないか尋ねた。
すると、「わしの家にいたよ、案内する前に魚を食べな」と言った。
ナーローパは、自分は僧なので夕方に食事はできないと断った。
すると、老人は次のように語って、姿を消した。
「習慣的な思考に束縛され、魚を食わずして、自我を強めて喜んでいては、どうしてグルを見出せようか。
明日はわが両親を殺すとしよう」
ナーローパは気を取り戻して、旅を続けた。


ナーローパは自分の父親を杭で刺し、母親を地下牢に閉じ込めたことがあり、今、両親を殺そうとしている男に出会った。
その男にティロパを見かけたことはないかと尋ねると、男は、両親を殺すのを助けてくれたら案内すると言った。
ナーローパが断わると、その男は次のように語って消えた。
「良心に由来する二分法の煩悩を滅ぼさないのであれば、グルを見出すのは難しい。
明日は出かけて物乞いをしよう。」
ナーローパは気を失って、回復してから、祈りを捧げて、旅を続けた。


ナーローパはある庵に辿り着いた。
そこに住んでいる隠者の一人がナーローパを見つけて接待をした。
ナーローパが、ティロパを見たことはありませんかと尋ねると、「自分がティロパだと言っている乞食がこの庵の中にいますよ」と答えた。
その乞食は、生きた魚を油で炒めていた。
隠者達がそれを見て、この庵の中で悪事を行うなと、乞食を叩いた。
乞食は指をパチンと鳴らすと、魚は湖に帰っていった。
ナーローパはこの男こそティロパに違いないと思い、教えを乞うた。


その乞食はシラミをナーローパに手渡して、殺すように言った。
しかし、ナーローパは殺せなかった。
すると、乞食は次のように語って姿を消した。
「習慣を作り出す思考というシラミを殺すことなく、グルを見出すのは難しい。
明日は奇人ショーを見に行くとしよう」
落胆してナーローパは起き上がり、探索の旅を続けた。


広々とした平地に来た時、大勢の片目の人達、目の見えない人、耳の聞こえない人、話すことのできない人、走り回ることのできない足の悪い人、そして自分自身を優しく撫でる死体に出会った。
ナーローパが、ティロパを見たことはありませんかと尋ねると、彼らはこう告げた。
「その人も、どんな人も見たことがないよ。
もし、あなたが本当にその人に会いたいなら、次のようにすることだ。
二分法の束縛から放たれよ。
そうすれば、片目でいることは大衆の資質であることであり、
目が見えないことは、ものを見ることなくして見ることであり、
耳が聞こえないことは、ものを聞くことなくして聞くことであり、

死神の動かざることは、無為なるものの微風であることを、理解する内なる太陽が輝く。」


このようにマハー・ムドラーのシンボルが示されて、すべてはかき消えた。


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ナーローパが自殺寸前のところで、ティロパが現れ、弟子として受け入れます。
その後、ティロパは不動のまま一年座り続けました。
一年の終わりになって、ティロパはわずかな動きを見せました。
ナーローパは教えを乞うようにする素振りを見せました。
すると、ティロパは彼に、高い寺院の屋根から飛び降りることを要求しました。
ナーローパは言われた通りにすると、体がつぶれてしまい、大変な苦痛を味わいました。
しかし、ティロパが彼に手を触れると、治ってしまいました。


これと同じパタンが11回続きました。
ナーローパは、屋根から飛び降りることのかわりに、火の中に身を投げ、死ぬまで打ち叩かれ、ヒルに血を吸われ、燃え盛る破片で突き刺され、死ぬほど走らされ、再び打ち叩かれ、もう一度打ち叩かれ、女性との関係に苦しまされ、配偶者を師に与えて虐待されるのを見つめさせられ、両腕両足を切断して曼荼羅状にして師に差し出させられました。
その都度、ティロパは手で触れることで治し、貴重な教えを授けました。
 

posted by morfo at 22:41| Comment(0) | 番外編(秘儀的物語) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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