2011年04月24日

ゾロアスター教とガヤ・マルタンの殺害

古代からヘレニズム期のほとんどの宗教、秘儀宗教は女性的な神性を重視しています。
ですが、ペルシャのゾロアスター教とその影響を受けたユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの啓示宗教は例外です。
ゾロスターは紀元前7Cから18Cくらいに東イランに現われた人物で、世界最古の預言者とも言われています。
ゾロアスターはペルシャの宗教をより抽象的で倫理的な方向に改革しました。
ゾロアスターは「宇宙がやがて完全なものになって悪が滅びる」という、1方向的な時間軸を持った明確な世界観を人類史上始めて打ち立てました。
そのためには、善と悪をはっきりと区別する厳密な倫理的な2元論が要請されます。


その後、ペルシャの宗教はマズダ神を主神に昇格させた「マズダ教」と、より伝統的なミスラを主神とした「ミスラ教(ズルワン主義)」に分裂しました。
誤解もあって、一般に「ゾロアスター教」というとマズダ教を指します。
ゾロアスター教(マズダ教)の神話と世界観は次のようなものです。


最高神で光神の「アフラマズダ(オフルマズド)」が「スプンタ・マンユ」と「アンラ・マンユ(アフリマン)」の双子の2神を生み、この2神が自らの意志で前者が善、後者が悪を選択しました。
ただ、スプンタ・マンユはアフラマズダとほぼ同一視されました。
アンラ・マンユは本来は祖神でしたが、マズダ教では悪神となっています。


暗黒の深淵にいたアンラ・マンユは光の高みにいたアフラマズダを知ると光の国まで昇ってアフラマズダを攻撃しました。
両者は共に無限な存在ですが、アフラマズダは期限を決めて戦うことを提案します。
アフラマズダが聖なる祈りを唱えると、アンラ・マンユは暗黒の深淵に落ちて3000年間、気絶したままになります。


アフラマズダは戦場でもあり牢獄でもある「宇宙」の創造を始めます。
まず最初の3000年で宇宙をまず霊的な見えない世界で創造しました。
アフラマズダは「善思」、「正義」、「敬虔」、「統治」、「完全」、「不滅」という抽象的な原理の性質を持った6大天使を、次に下位の神々などを作りました。


次の3000年で物質的な目に見える世界で創造しました。
物質的な宇宙は天空、水、大地、植物、動物、人間、そして火の順で創造されました。最初の人間は太陽のように光り輝く「ガヤ・マルタン(ガヨーマルト)」です。
このガヤ・マルタンが原人間「アントロポス」の原型です。また、月のように輝く「聖なる雄牛」も創造されました。


アンラ・マンユはやがて復活して軍団とともに宇宙に攻撃を始めます(アンラ・マンユが気絶していたのが3000年、宇宙の創造が6000年ですので、3000年の差がありますが、この理由は不明です)。
彼らはガヤ・マルタンと聖なる牛を殺しました。
ガヤ・マルタンの死体からは様々な金属が生れ、その精液が落ちて大地の女神が受胎して「最初の夫婦(男女)」が生まれます。
一方、聖牛の死体からは穀物や薬草などが生まれました。


アンラ・マンユは宇宙から暗黒の深淵に戻ろうとしましたが、天使達がこれを妨げ、宇宙の中に閉じ込めました。
アンラ・マンユは最初の人間を誘惑して、アンラ・マンユが創造神だと嘘をつくという初めての罪を犯して堕落してしまいました。


人間の魂は死後に、3日間死体のそばに留まって人生を反省します。
その後、審判の場所に進み、ミスラ神らによって裁かれます。
ゾロアスター教の霊魂観はエジプト同様複雑です。
人間は「アフ(エーテル体)」、「バオダハ(アストラル体)」、「ルワン(魂)」、「ダナーエ(霊)」、「フラワシ(守護霊)」の5つからなります。


ルワンは審判を受けた後、善人なら美しい乙女に、悪人なら醜い老婆に向かえられます。これは自分自身のダナーエなのです。
そして、チントワ橋を渡ります。
悪人はこの橋から落ちて地獄に墜ちます。
善人は神々を見て、火によって浄化されて天に昇ります。
こうして共に終末を待ちます。
天国は4段階からなっていて、最高の人間はアフラマズダのいる最高天で不死の甘露を飲むことができます。


アンラ・マンユが宇宙を攻撃し始めて3000年後にゾロアスターが生れ、宇宙は良い方向に向い始めます。
彼の死後、千年ごとに、霊界に保存されていたゾロアスターの精子が地上の処女に受胎されて救世主「サオシャント」が降臨し、宇宙は徐々に良くなり、3人目のサオシャントが現れる3000年後に、つまり宇宙が創造されて1万2000年後に終末を向かえます。
ただ、それぞれの1000年の間では、宇宙は「黄金の時代」、「銀の時代」、「鋼の時代」、「鉄の時代」を経て悪化し、ゾロアスター教への崇拝も衰退して社会は混沌とします。
ですが、最後には正しい王子が現れて秩序を回復し、新しい救世主を向かえます。


そして終末には、まず、救世主が現われて57年に渡る神聖な統治を行います。
そして、アンラ・マンユとの最終戦争が行われます。
彗星が大地に激突して溶鉱が噴出し、善神側は悪神側の龍をこの溶鉱で退治します。
同時に、すべての死者が肉体を持って復活して最後の審判を受けます。そして、再度、今度は肉体を持って3日間天国と地獄に送られます。
そして、溶鉱によって地上の人々も審判を受けます。善人はこれを温かく心地よく感じ、悪人はこれに焼かれて結局は浄化されます。
そして、溶鉱は地獄にまで流れてすべてを浄化し、悪は無力化されて宇宙から追放され、その通路も塞がれます。
こうして世界は完全なものとして立て直されて、人間はサオシャントに聖牛の脂と生命の樹からとれるハオマ酒を飲まされて不死になります。


ゾロアスター教の神話では、堕落するのは原人間(多分、これは両性具有的存在でしょう)ではなくて最初の人間の夫婦(男女)です。
原人間は殺害されて人間の起源となります。
これは、人間の霊魂が神的なものであるという秘儀宗教と同じ考えを示すよりも、人間が本来は善の側に属するという考え方を示しているように思えます。
ですから、人間の勤めは霊魂の神性を直観することよりも、善なる行いをすることなのです。
ですが、人間の霊魂の奥底には守護霊であるフラワシが存在するので、これが神と人間をつなぐ霊的な働きをすると考えられました。  


ゾロアスター教では物質世界はアフラマズダが悪を克服するために作ったものとして肯定的に考えます。
ですから、終末における復活も肉体で行われますし、物質世界は消滅させられることもないのです。
また、ゾロアスター教では禁欲そのものを主張することもありません。 


ゾロアスター教が勢力を持ったのは東ペルシャだけで、他の地域ではミスラ教の方が優勢でした。
ですが、言うでもなく、救世主と終末の到来、神聖な統治(千年王国)、最終戦争、死者の復活、最期の審判、神の国、墜天使、聖餐などは、ゾロアスター教、あるいはズルワン主義からからユダヤ、キリスト、イスラム教、ヒンドゥー教、大乗仏教、道教に伝わったものです。

*姉妹ブログ「神秘主義思想史」のページも参考してください。
ゾロアスター教の宇宙論:時間
ゾロアスター教の宇宙論:パンテオン
ゾロアスター教の宇宙論:空間

posted by morfo at 09:18| Comment(0) | 堕落・救済神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。