2011年04月21日

原人間アントロポス

神話には「原人間」、「最初の人間」、「地上の(堕落した)最初の人間」、「祖神」、「トーテム祖先」、「始祖」、といった現在の人間の起源になった様々な存在が語られます。
これらは潜在的で普遍的な純粋な霊魂を表します。
中でも「原人間」と呼ばれる存在は、現在の人間とはまったく異なる最も根源的な存在です。
この「原人間」はどんな存在なのでしょうか?
非精神的で胎児的な存在と考えられることもあれば、神に近い光を放つ存在と考えられることもあります。


旧約聖書では神が泥をこねて人間を作りましたし、バビロニアの神話では悪竜の血から人間が生まれました。
このように人間の起源や人間の存在を低いものとして考えることはごく一般的です。
ですが、人間やその霊魂が本来神的なものであると考える時、神話には至高神に等しいような存在としての「原人間」が現われます。
この原人間は神的世界に存在する人間の原型としての本来の姿であるので、単に「人間」と表現してもかまわないのですが、分かりやすく「原人間」と表現しましょう。
この「原人間」はギリシャ語では「アントロポス」と呼ばれます。
アントロポスは至高神からその本質を受け継いで生まれた最初の存在で、「神の(一人)子」、「子の神(子である神)」と表現されることもあります。
神の「似像」だとも、神が自分自身を見て生んだ存在だとも考えられました。


原初の神的な巨人が殺されて宇宙や生命が生まれたとする神話や、文化英雄による文化の獲得と共に人間が堕落した(死すべき存在になった)といった神話をもとに、新たな 原人間の「堕落神話」が生まれたのでしょう。
「堕落神話」は、霊魂が地上の人間として生まれることになったことの起源を、アントロポスやそれに似た存在が、天上から堕落したことに求めます。
この堕落する存在は、アントロポスやアントロポスから生まれた男女一対の人間「原夫婦」の場合もありますし、または、女性的な霊的な知恵である「ソフィア」の場合もあります。

アントロポスなどは、地上や地上に映った自分の姿に魅力を感じてしまうなどの、自分自身の理由から堕落して囚われてしまうこともあれば、悪神などによって無理やり囚われたり、殺害されたりすることもあります。
前者は悪神を認めない1元論的な考え方、後者は善悪2元論的な考え方の場合です。


このように人間の霊魂の起源を歴史的、宇宙論的にはっきりと語れば、当然、終末をも語る必要が生まれます。
こうして、霊魂の天上への復帰としての救済を、個人だけではなくて宇宙全体の問題として考えて「終末論」の予言が生まれます。
終末にはアントロポスやそれに似た存在が、「救世主」あるいは神の王国の「統治者」として再来するという考えもあります。
新約聖書ではイエスを、旧約聖書の黙示録「ダニエル書」の表現を受け継いで、「人の子(原人間である神の子?)」と表現しましたが、この考え方の背景にはアントロポス再来の神話があるかもしれません。
つまり、過去形の「アントロポス」は現在形としては預言者として、未来形としては「救世主」としてあらわれるのです。


こういった終末論を語る宗教は、預言者が神秘的な体験で見たヴィジョンを信仰する「啓示宗教」という形をとります。
ですが、「秘儀神話」と「堕落・救済神話」の本質的なテーマは同じですから、秘儀宗教もその教義の部分は堕落・救済神話を持つ啓示宗教と似ています。
 

posted by morfo at 23:11| Comment(0) | 堕落・救済神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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