2011年04月17日

イシス=オシリス秘儀

イシス=オシリスの公の祭儀には、「イシスの船」と呼ばれる春に行われる航海の始まりを知られるものと、「インヴェンティオ」と呼ばれる秋に行われるオシリスの死と復活を演じる演劇的な儀礼がありました。
後者では、オシリスの死を象徴して穀物の束を切り取ったり、復活を象徴して倒してあった「ジェド柱(これも穀物の束を盛ったもので、日本の稲叢に相当します)」を立てるといった儀礼が行われたと思われます。


(後世?)これらとは別に個人的なイニシエーションの秘儀が3段階で構成されていました。
それは「イシス小秘儀」と「オシリスの大秘儀」、そしておそらく「奥義秘儀」と呼ばれました。


イシスの祭りでは動物を犠牲にせずに、乳、蜂蜜、薬草が選ばれました。
それに、肉食や飲酒も禁止されました。
このことは、キュベレやディオニュソスの秘儀の荒々しく熱狂的な性質とは異なって、イシス秘儀が洗練され瞑想的な性質を持っていることを示しています。


秘儀の具体的な部分はほとんど分かっていません。
ですが、イシスの秘儀参入を扱った古代文学のアプレイウス『黄金のロバ』に記述があります。
これによれば、イシスの小秘儀では、秘儀参入者はまず10日間肉食と飲酒を避けます。
そして、新しい麻の服を着て冥界のプロセルピナの神殿を模した地下の部屋に降りて行きます。
死後に魂は肉体から抜け出て、冥界に赴き、物質世界と結びついた一切の感覚やイメージを解体するのです。
そして、次に4大元素の領域を通過します。
魂は、まず4大元素という物質の根源的な力によって浄化されるのです。
これは宇宙論的には月下の煉獄に相当します。


次に、参入者は順に様々な神々の部屋に昇って行きます。
これは7惑星の神々など、宇宙の様々な階層に対応します。そして、おそらく明るい部屋に入って自らをオシリスあるいはホルスと同一視します。
この部分は「真夜中の太陽を見る」と表現されています。
これは、自らの魂のなかの意識的・自我的な作用を、地下の太陽のような存在として認識して発見するのです。
つまり、太陽が自然に光をそそぎ育むように、地下の太陽に例えられ肉体の中に墜ちた魂の意識的な自我が、肉体に働きかけてこれを育むのです。

そして次の朝、参入者は夜中の12時間、あるいは12宮を象徴する12の法衣を着てシュロの葉の花冠をいだき、イシス像と司祭の前に立ちます。
この姿は復活するオシリス=ホルス、あるいはイシスの象徴です。


そして翌日、儀礼的な宴によってイニシエーションが完了します。
こうして入会者は完全に浄化された魂として再生するのです。


参入者は1年後にオシリスの大秘儀を受けます。
さらに3つめのイニシエーションである奥義秘儀が来ます。これらについては不明です。
ですが、大秘儀では単なる魂の再生ではなくて、霊的・神的な誕生・復帰がテーマになっていたと推測できます。
つまり、小秘儀が4大元素や7惑星、恒星天にある12宮と関係した魂を問題にしていたのに対して、大秘儀は恒星天を通り抜けた宇宙の外、神の世界と関係した霊魂の神的部分を問題にしていたのです。
ですから、参入者が地下から地上に出るという行為も、最終的には天球の外に出るということの象徴とされたはずです。


これまで紹介したのは、演劇的な象徴的行為による儀礼ですが、大秘秘儀や奥義秘儀にはこれ以外にも、より直接的な瞑想的トリップ体験が重視されたかもしれません。
言い伝えによると、参入者は3日間に渡って仮死状態となって実際に魂世界、霊的世界を体験したと言われています。


このように、イシス=オシリスの秘儀の儀礼と象徴には、ヘレニズム期のオリエントの様々な象徴体系が統合されています。

ちなみに、クフ王の大ピラミッドにもイシス=オシリスの秘儀と類似した構造があります。
女王の間にはイシスを表すシリウスへ向かった通気孔のようなものがあって、王の間にはオシリスを表すオリオン座セータ星へ向かった通気孔のようなものがあります。
女王の間にはイシスの霊がやってきて聖婚を行い、王の間からオリオンのオシリスの宮殿へと昇天したのでしょう。

isishigi.jpg

*イシス秘儀の様子(「図説 古代密儀宗教」平凡社 より)
  

posted by morfo at 22:12| Comment(0) | 秘儀神話と秘儀宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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