2011年04月17日

オルペウス秘儀

紀元前6C頃のギリシャの世界観、つまりホメロスに代表されるオリンポスの宗教によれば、人間は人間に対して決して好意的ではないゼウスや運命の女神などによってもてあそばれながらも、現世利益を求めて生き、死後は冥界でみじめに暮らす、というものでした。
こういった考え方に対して、シャーマニズムやオリエントの神秘主義的な世界観を引き継いだ、霊的なものを積極的に求める宗教・思想運動が起こりました。
秘儀宗教やオルペウス教、そしてプラトンに代表される多くのギリシャ哲学はこの流れにあります。


こういった潮流の象徴的存在が、トラキア出身と言われる伝説的人物オルペウス(オルフェウス)です。
彼は、ルネサンス、ロマン主義など、霊的なものが重視される時代には、常にその象徴として復活しました。
オルペウスの存在は神話化されていますが、その歴史的な実在性に関してははっきりしません。伝説によれば、彼はギリシャにおける秘儀の創始者です。
ズルワン主義(バビロニア=ペルシャ系の神秘主義思想)の影響が濃いと言われるオルペウス派によってギリシャの宗教思想、秘儀は大きく転換しました。先にディオニュソスの神話のオルペウス教による秘伝を紹介しましたが、彼らは独自の秘教的な神話の創造や神話解釈を行いました。ちなみに彼らの神話の核心にあたる創造神話は、姉妹ブログの記事で紹介する予定です。


神話のオルペウスはアポロン直系の存在ですが、ディオニュソス的な性質をも合わせ持っていて、次項で紹介するオシリスにも似ています。
彼はアポロンの子とも言われていて、アポロンから譲り受けた竪琴によって人や動物を魅惑します。
オルペウスはディオニュソスのように死んだ妻を助けるために冥界に下って竪琴で冥界の存在を魅惑して妻を連れ帰ろうとしますが、途中で後ろを振り返ってしまったために失敗します。
これは日本のイザナギ=イザナミの神話と同じです。
落胆したオルペウスは女性を避けて少年と暮らして、冥界から持ち帰った秘儀を教えました。

その後、オルペウスはディオニュソスの女性信者に引き裂かれて死んで、彼の頭部は竪琴に釘で打ちつけられて、オシリスの遺体と同じように川に投げ込まれました。
これはレスボス島に流れついて、オルペウスの首はディオニュソス神殿に埋葬されて、竪琴の方はアポロン神殿に保管されました。
一説では彼の首はその後も神託を下しました。


オルペウスの信仰は、1つの教団というよりも思想運動としての広がりを持ったものでした。
彼らは書物も重視して、秘教的な神話やその解釈、死後の案内書を残しました。
オルペウス派の思想は、輪廻思想、禁欲主義、菜食主義などを特徴としていて、音楽による浄化を重視するなど、瞑想的な傾向を持っています。


オルペウス派によれば、人間はティタンがディオニュソスを殺害した原罪を引き継いでいて、これに対する罰として霊魂が肉体に閉じ込められて輪廻を続けるのです。
ですから、オルペウス派は肉体を霊魂の墓と考えました。
オルペウス派によって初めて本格的な輪廻思想が西洋世界に持ち込まれました。
ですから、オルペウス派は禁欲によってティタン的要素を否定してディオニュソス的要素を伸ばすことで、輪廻からの解脱を果たそうとしました。菜食は、プロメテウスとゼウスの牛の分割以来の神と人間の区別を否定するものです。


オルぺウス派によれば、人は死後、複雑な道を通って冥界に向かいます。
正しい行いをした者は、聖なる草原とペルセポネーの森へと向かう右の道に送られます。
これに対して、邪悪な者は、近くに糸杉の生えたレーテーの泉に向かう左の道に送られます。
レーテーの泉の水を飲むと、地上の体験を忘れて地獄に送られて、千年後にその体験も忘れて地上に再生します。
ですが、これを飲まずに思い出の湖の水を求めて飲むと、ペルセポネーの胸元に行くことができて、輪廻から解き放たれて神のようになれるのです。


オルペウス派は、清めの儀礼やイニシエーション的儀礼を行っていましたが、その実態については分かっていません。
体系化された秘儀を行っていたかどうかも不明です。


オルペウス派の思想は、エンペドクレス、ピタゴラス、プラトンらの哲学者に受け継がれました。
ピタゴラスはエジプトやペルシャなどを旅して秘儀に参入したと言われています。
ピタゴラスがオルペウス派の思想につけ加えたものは、秘密結社的な組織性と、秘教的な数学を中心にした総合的な学問の体系です。
プラトンはピタゴラス派に大きな影響を受けました。
彼がオルペウスやピタゴラスの思想につけ加えたのは、霊的なものを探究してそれを地上に実現する実践的で総合的な哲学です。
彼は、霊魂が地上に再生する時にレーテーの水を飲んで霊的世界の体験を忘れてしまうので、それを思い出すことが哲学の目的だと考えました。

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*オフペウス(「図説 古代密儀宗教」平凡社 より)
 

posted by morfo at 00:51| Comment(2) | 秘儀神話と秘儀宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
オルペウス教というクセジュ文庫の本高すぎ

なぜ再販しないのか?
読む人も多いだろうに、絶版になる理由がわからない。もしかして圧力でもかかっているのか

一冊七千円だってさ

でも絶対買ってやる
そして、電子書籍化にして、アングラサイトに拡散し、多くの人に読ませてあげよう

知識の独占は悪だ
Posted by イルミナティ at 2016年10月06日 20:50
イルミナティさん、コメントありがとうございます。

2003年に出た本ですね。
マイナーな本の再販は難しいですね。
図書館で探されてはどうでしょうか。

私、持っていますが、まだ、読んでいません。
このブログの文章は、それ以前に書いたものです。

すぐには読めませんが、いずれ読んだら、この文章をヴァージョンアップしたいと思います。
Posted by morfo at 2016年10月07日 11:11
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