ディオニュソスの神話には、2系統の神話があります。
一般に知られている「神から生まれた人の子、小ディオニュソス」の神話と、オルフェウス教徒の秘伝による「神々の子、大ディオニュソス(ザクレウス)」の神話です。
オルフェウス秘儀が基づく神話は、後者の神話です。
この項では、この大ディオニュソスの神話を紹介しましょう。
「大女神デルメルが娘のペルセポネーを洞窟に隠していましたが、ペルセポネーが両親のためにマントを織っている時に、ゼウスがヘビの姿で近づいてペルセポネーと交わったため、ペルセポネーはディオニュソスを生みました。
ディオニュソスは玩具(サイコロ、ボール、コマ、黄金のリンゴ、うなり板、羊毛)で遊んで育ちました。
これに嫉妬したゼウスの妻ヘラが、ティタン神族にディオニュソスを襲わせました。
ティタン達は顔を白く塗って近寄り、ディオニュソスを八つ裂き(七つ裂き)にして、これを大鍋で煮て食べました。
(一説ではこの時、ディオニュソスは角を持つ牡牛の姿だったといわれています。)
これにゼウスは怒って、ティタン神族を電光で撃ち殺しました。
人間はその灰から作られました。
あるいは、電光に撃たれたティタン神族から立ち上った蒸気が凝固したススから作られたとも言われます。
デルメルがディオニュソスの四肢の灰を集めると、その灰からブドウ樹が生えました。
ですが、ディオニュソスの心臓だけは助かったので、ゼウスがこれを地母神ヒプタ(あるいはアテナ)に頭上の篭の中に隠して運ばせて引き取りました」
*ディオニュソスとその児童神としての分身のイアッコス