2011年04月09日

神話の秘儀的解釈

秘儀宗教にとって重要なのは、神話の再現だけでなくその秘教的な解釈です。
秘儀神話は前の節で紹介した自然の死と再生の循環を現す豊穰の神話をベースとしています。

旧石器時代の狩猟・採集文化の宗教的核心は、冥界の地母神への一体化としての死と再生でした。
神的なものはこの大地的な生む力です。
そして、死後、冥界の地母神のもとへ行くことを求めました。

一方、新石器時代の農耕・牧畜文化の宗教的核心は、復活した穀物神への一体化でした。
神的なものは冥界と地上を循環する純粋な魂です。
あるいは、復活した太陽神への一体化でした。
神的なものは天上の生ませる力です。


伝統的な宇宙論では、通常の死者は冥界へ降ります。
新石器時代以降の農耕・牧畜文化では、死後の魂は個性を喪失してまた現世に生まれ変わります。
ただ、一部の悪者は地獄のような場所へ、英雄やシャーマンは天や彼方の楽園へ行ってこの再生の循環からはずれます。
王国化した文化では、王族がこの天や楽園への権利を独占すると同時に、一般の人間の魂が行く冥界も、あまり暮らしやすくない場所になって、再生するという思想もなくなっていきます。
本来の秘儀宗教は、この忘れ去られた伝統的な不死と復活の思想を実体験させるものだったのでしょう。


ですが、エジプト起源の復活の思想、インド起源の輪廻思想、バビロニア起源の星辰信仰と階層的宇宙論、ペルシャ起源の善悪2元論、ギリシャの神秘哲学などの思想によって、時代を追うごとに高度に神秘主義的で象徴的、神学的な解釈がほどこされるようになりました。
秘儀宗教は古来の神話・儀礼を新たな解釈によって再創造したのです。


ヘレニズム期は、宇宙論や死後観が大きく変化した時期でした。
特にバビロニア起源の階層的な宇宙論が、徐々にヘレニズム世界全体に広がっていきました。
これは一般的にはカルデアのマギ(占星学に詳しい神官達)の世界観と考えられていましたが、正しくはズルワン=ミトラ教の宇宙論として作られたものです。
エジプトのアレキサンドリアではヘルメス主義の宇宙論として広がりました。


これによると、通常の死者の魂は、地下冥界へ下降するのではなく、天に向かって上昇します。
地下世界で経験すると考えらた様々な試練、つまり煉獄の体験は、4大原素でできている天球の下、「月下の天空」に移されます。そして、通常の冥界に当たる魂の世界は、その上の「天球(惑星天)」と考えられるようになりました。
人間と宇宙とは照応する関係にあります。


そして、人間の霊魂の本質は、本来は神の世界に存在する霊的なものですが、7惑星に対応する7重の魂をまとって、地上に墜ちてきたのです。
ですから、人間の霊魂は死後、魂の様々な性質を7惑星に返しながら天球を上昇していくのです。
最後には楽園である天球(宇宙)の最上部の「恒星天」、人によっては天球(宇宙)の外の神の世界である神々の世界にまで戻っていくのです。


秘儀宗教のいくつかも、徐々にこの宇宙論を取り入れて、従来の神話の解釈を変容させていきました。


こうしていくつかの最創造された秘儀宗教は、死して再生して再生する神を、物質的な地上に捕らわれてしまった神的な霊魂の解放として解釈しました。
神の死は人間として地上に生まれた霊魂の、その神的な部分(この部分を「ダイモン(守護霊、指導霊)」として半ば外的な存在として考えることもありました)が眠らされてしまうことを、神の再生はこれを目覚ませることを象徴するのです。

秘儀宗教のいくつかの最終形では、魂は冥界という物質的な領域で死と再生をへて、天球の惑星天を越えて、恒星天、あるいは天上の神の領域にまで戻(り輪廻から解脱す)ることを目指すと考えるようになりました。
つまり、シャーマンの冥界下りや、その象徴としての洞窟儀礼などに単を発する「冥界下降&地上復帰」は、霊魂の「地上下降&天上復帰」の象徴になったのです。


次の項からは、代表的な秘儀宗教の神話を秘儀をいくつか紹介しながら、秘義宗教が徐々に発展していく流れを見てみましょう。
 

posted by morfo at 00:18| Comment(0) | 秘儀神話と秘儀宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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