2011年04月04日

死して再生する生物の守護神

次は、生物の守護神が焦点となる神話です。植物神(穀物神)や動物神(有角神)は、年周期で死して再生します。

農耕・牧畜文化では生物神は冥界神に奪われ、母もしくは妻(恋人)の地母神は悲しんで隠れてしまい、大地は不毛となります。
神々は困って、生物の守護神の再生を計りますが、完全に死を免れることなく冥界と地上を行き来しなければなりません。
あるいは、地母神は生物の守護神を自分の身代わりに冥界の女神に渡してしまうこともあります。

シュメール神話では、金星の女神で地母神のイナンナは、冥界の征服に失敗して妹の冥界女王エレシュキガルに囚われます。
そして、牛飼いで夫のドゥムジ(動物神に等しい存在)を身代わりにして復活します。
ドゥムジは姉のブドウ酒の神ゲシュティアンナ(植物神です)が同情して、2人で交代で冥界に1/2ずつ留まることにしました。
この神話は牧畜と栽培文化を反映しています。

ギリシャ神話では、地母神のデルメルの娘で麦の穀物神であるペルセポネーが冥界王ハデスに奪われます。
デルメルが悲しんでオリンポスからいなくなると、大地が不毛になって神々が困りました。
それでペルセポネーは再生を許されますが、冥界の食物を口にしていたので、1年の1/3は冥界に留まらなくてはいけません。
この神話は、麦の農耕文化を反映しています。

一方、狩猟・採集文化の神話を受け継ぐ物語ででは、生物の守護神(若芽、太陽、猪などの神)は、地母神の息子であり恋人ですが、地母神自身によって殺されたり自殺して冥界に落ちます。
ですが、復活します。
本来の神話では地母神自身が冥界神であって、冬に冥界に降りた生物の守護神と結ばれ、彼を再生させるのですが、後世ではこの地母神の役割が理解できなくなって、物語も変容したのです。 

トルコの『アッティス神話』では、地母的のキュベレが、樹の芽から生まれたアッティスを独占しようとします。
その結果、アッティスは自らを去勢して樹の下で狂い死にします。ですが、アッティスの死体の髪の毛は伸びつつけます。
儀礼ではアッティスは再生します。
アッティスとキュベレの神話は次の節で詳しく紹介しています。

ケルトに伝わる狩猟文化の神話を残されている古代の絵画から推測しみしましょう。
(冬に)有角神である鹿神のケルヌンノスは冥界に降りて地母神アナと結ばれます。
ですが(春になると)、地上を荒らしていた破壊神エススが冥界に降りてアナが奪われます。アナが裏切ったのかもしれません。
その代わり、ケルヌンノスはアナから角を受け取って地上に上がって獣王となります。
ですが、(冬になると)また地下に下ってエススからアナを奪い返し、角を落とします。

これらの生物の守護神の死と再生の物語も、心理的には男性豊穰神の死と再生の物語と同じような意味を表わします。

posted by morfo at 23:35| Comment(0) | 豊穣と循環の神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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