2011年03月21日

ギルガメッシュ神話:解釈編

ギルガメッシュが1/3人間であることは、天上、地上、冥界の3界のうち冥界に支配権が及ばない死すべき存在であることを示しています。
王となったギルガメッシュは未発達な人格でしたが、無意識的な人格のエンキドゥを得ることで成人に向かいます。
フンババ退治は、成人のプロセスの龍退治と同じです。


また、無意識の攻撃的側面を表わすフンババを退治しに意識と無意識の境界領域にまで出かけた後、無意識の魅惑的側面を表わすイシュタルの誘惑を受けて、これを拒否します。
すると今度は、攻撃的な無意識である天牛がギルガメッシュのところ、つまり意識にまでやってきます。
ですが、これを利己的に得ることなく神々に捧げます。ギルガメッシュはこれで完全な成人を果たします。


ギルガメッシュは成熟の道を歩んでいたようにも見えますが、後の話の展開を考えると、そうではなかったようです。
エンキドゥの死は、ギルガメッシュが無意識的な創造性を殺してしまったことを示しています。
天牛を神々に捧げたのは、無意識の創造性を活かしたのではなくて、社会的な秩序のためにそれを殺してしまったことを示していたのです。


イシュタルと天牛の神話の背景には、地母神と聖婚して牛をもらう、あるいは地母神から牛を奪うというシャーマンの行動があります。
ギリガメッシュはシャーマン的な死と再生の意味を理解できずにそれを拒否するのです。
ですが、結局、ギルガメッシュは世俗的な人間の完成の限界を知って不死の探究に向います。


ウトナピシュティムは月神の助けでライオンを退治しますが、これは太陽神の助けでフンババを倒すこととは別の意味を持っています。
フンババ退治が成人の龍退治に相当するのに対して、ライオン退治は成熟の龍退治の初歩的なものです。
なぜならライオン退治は夜に行われていて、より無意識の領域での作業だからです。


次にとうとう、彼は死の領域に下ります。
太陽が毎夜、死から再生する道は、普通の死者が赴く冥界王ネルガルのいる冥界への道とは異なりますが、死の領域であることは変わりません。
彼は暗黒の道を下り、物質的な感覚の世界と分かれを告げます。そして、地下の太陽神(日常世界から切り離された意識そのもの)、大地の女神(無意識的な魂)、そして、宝石(無意識の創造性の結晶)を発見します。
ですが、これらは不死をもたらしません。

ウトナピシュティムが不死の秘密を語ります。
彼は洪水を生き延びて動物達を救いました。
洪水による死は、無意識の無秩序な力によって意識を失ってしまうことを意味します。
動物達は、本来的な無意識の働きを意味します。
ウトナピシュティムは無意識の力を克服して意識を失うことなく、無意識の働きを救いました。
その後、ウトナピシュティムが捧げる供犠に神々が群がります。


このことは、意識が最終的に無意識を神的なものに変容させたことを意味します。
こうしてウトナピシュティムは不死性を獲得します。
ですから、ウトナピシュティムがギルガメッシュに出した眠らない課題は、ウトナピシュティムの偉業の一要素に対応します。


ギルガメッシュは不死性を獲得することには失敗しましたが、ウトナピシュティムの助けで再生の道を歩みます。
そして、無意識の深みから若返りの草を得ることに成功します。
若返りの草は成熟によって得られる富のような存在でしょう。


ですが、これを蛇に取られてしまいます。
腐敗する死すべき存在の象徴であるパンを食べたのがいけなかったのでしょうか、それとも彼が水浴びした冷たい水が触れてはいけない死の水だったのかもしれません。
ギルガメッシュが若返りの草を失うのは、アリアドネをギリシャに連れて帰れないテセウスや、宝物をもって帰る途中でなくしてしまう童話の主人公に似ています。


ですが、違いもあります。
蛇は若返りの草によって脱皮します。
つまり、ギルガメッシュは無意識から得たものを、無意識に返してそれを再生させています。
これは彼がライオンを殺したこととは反対で、大地のライオンでるある蛇を再生させたのです。
これまで一貫して利己的だったギルガメッシュが、意図したわけではないにしろ、初めて利他的な行動をしたのです。
失敗こそが獲得であったのです。


ギルガメッシュは不死性の獲得に失敗しましたが、この神話は不死性の獲得の秘密を語り、その可能性を示しました。
また、この物語には後の説で紹介する秘儀のプロセスにそっくりなテーマが多くあります。
それは「冥界下り」、獣皮〜裸〜新着服という「衣服の取り替え」、「真夜中の太陽」、「女神との出会い」、「水の渡り」、「再生」などです。
また、秘儀から逆に推測すると、6日7夜の無睡眠の課題は、本来は肉体から抜け出て7惑星に対応する神々の世界にトリップする体験だったのかもしれません。

posted by morfo at 09:39| Comment(0) | 不死探求の神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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