2011年03月20日

テシュプとイルルヤンカシュの神話

嵐神テシュプが龍神イルルヤンカシュを退治する古いヒッタイト(現在のトルコ地方)の神話は、人間の死と不死について語ります。
これは主神による龍退治の神話ですが、単に成人や成熟のプロセス、国家的秩序の確立を示すのではない深い秘密を語っています。 

「龍神は嵐神と闘って勝ち、嵐神の心臓と目を奪いました。
嵐神は貧乏な人間の男の娘と結婚して男の子を生ませました。
この息子が成人すると、嵐神は龍神の娘と結婚させました。
そして、龍神の家から、嵐神の心臓と目を取り戻させました。
嵐神は再び龍神を闘って、今度は勝ちました。
ですが、息子は妻を見捨てることができなかったので、龍神と共に死んでしまいました」 

この神話が語るのは、まず、主神の龍退治に神の意識を受け継いだ人間の力が必要だということです。
これはギリシャ神話でも同じです。
ゼウスは巨人族を退治するためには、人間に生ませたヘラクレスやディオニュソスの助けを借りる必要がありました。
人間は、嵐神に比べて地上の物質性の中に住んでいるので、龍に対する知識や制御力に秀でる可能性があるのです。
心理的には、人間は無意識に向かい合う意識、嵐神は獲得されるべき秩序を示します。

この神話が興味深いのは、嵐神の目と心臓が龍神に奪われたことです。
神の目と心臓は、物質世界に捕らわれて潜在化している神的な意識や智恵と力を象徴します。
嵐神と貧乏な人間の男の娘の息子が龍神の娘と結婚することは、意識が物質性や無意識の深層に潜ることを意味します。
そして、嵐神の目と心臓を取り戻して、この無意識の底から神性を目覚めさせるのです。
これは、重要なテーマです。
ですが、息子は物質性の象徴である妻に囚われて死んでしまいます。
言語的な秩序が確立されて、人間の死すべき運命が生まれたことを表現しているのでしょう。

しかし、疑問は残ります。この龍神の娘には、単に言語的な秩序を生むことになる龍神が奪った目と心臓とは別のレベルの神性がまだ眠っているかもしれません。
もし、そうだとしたら、嵐神の息子がこの神性を目覚ませると、嵐神を乗り越える存在となるかもしれません。
テティスの息子がゼウスを乗り越える可能性を持っていたのと同じように。
だからこそ嵐神は息子を殺したのです。
この神話は、人間の不死性の可能性とその方法を暗示しています。    

posted by morfo at 08:36| Comment(0) | 不死探求の神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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