2011年03月20日

プロメテウス神話

ギリシャ神話のプロメテウス神話は、人間が死すべき運命となった原因と、不死の化の可能性について語ります。

「古い神々であるティタン神族のプロメテウスとエピメテウスは、ゼウスから人間を神々と区別された運命を持った者に完成させる仕事を任されました。
エピメテウスは誤って、人間には動物に比べて弱々しい肉体しか与えませんでした。
一方、プロメテウスは牛を人間と神々に分配する時に、人間のために価値があると思った牛の肉を選んでこれを皮と胃袋に隠し、ゼウスには価値のないと思った牛の骨を脂肪でくるんで良く見せてこれを選ばせて渡しました。
ですが、実際は骨こそが不死なるもので、肉の方が可死なるものだったのです。

こうして人間の死すべき運命が暗示されました。


ゼウスはこの企みに怒り、人間から火を隠したので、プロメテウスは人間のために火を盗み出しました。
ゼウスはまたこれに怒って、プロメテウスを岩にくくりつけて串刺しにして、毎昼に大鷹に肝臓を食べられ続ける責め苦を負わせることにしました。


ですが、プロメテウスはティターン神である母からゼウスに関する秘密を聞いて知っていたので、ゼウスはこれと交換に彼を助けることにしました。
その秘密とは、海の女神の1人テティスが生む男神の子はやがてゼウスをしのぐ神になる、というものでした。
ですから、ゼウスはテティスに求婚していましたが、これを止めて、テティスを無理やり人間の男と結婚させました。
そして、ゼウスの子ヘラクレスに大鷹を射殺させて、プロメテウスを神々の仲間に復帰させました。
また一説によると、ヘラクレスの毒矢で誤って傷を受けたケンタウロスのケイロンが、自らの不死性をプロメテウスに捧げた、とも伝えられています。

また、ゼウスは、プロメテウスの兄弟であるエピメテウスの元に、外見は美しいけれど恥知らずでずる賢い女神パンドラを贈りました。
エピメテウスはプロメテウスから贈物を受け取るなと注意されていましたが、外見に騙されて受け取ってしまいます。
パンドラが秘密の箱を開けると、人間に死をもたらすあらゆる不幸がそこから出てしまい、希望だけが箱の中に残りました。
また、人間の女性もパンドラをもとに生まれます。
こうして初めて、人間は死すべき存在となり、労働し、女性を養い、女性に子を生ませないといけなくなりました」


プロメテウスは意識的な人間の原型のような存在です。
プロメテウスが責め苦を負うのは、成熟のプロセスを歩み始める童話の主人公の不健康や貧乏、そしてパルツィヴァル神話の聖杯王の傷と同じです。
つまり、言語的、日常的、文化的な秩序によって無意識的な創造性が殺されている人間の状態を象徴しています。
プロメテウスは文化・言語的秩序の象徴である火を盗んだ結果、言語的な意識が働く昼に、生命力の象徴である肝臓を食べられるのです(肝臓には痛感がないので、この痛みには気づけないという解釈もあります)。

そして、不死性を獲得したヘラクレスこそが、プロメテウスを解放させるのです。
また、プロメテウスは不死なものと可死なものを取り違えました。
ですからその結果、彼は死すべき物質の象徴である岩にしばりつけられたのです。

プロメテウスが意識的な人格だとすると、エピメテウスは無意識的な人格で肉体性に関係します。
パンドラの神話は、直接的には女性、労働、死の起源の物語で、女性蔑視も感じます。
ですが、パンドラや女性は物質性、肉体性の象徴で、プロメテウスが物質的なものを選んだことと、エピメテウスがパンドラを受け取ったことは対応しています。
その結果、人間は死すべきものとなったのです。

ですが、箱の中には希望が残っています。
この希望の意味は、プロメテウスが知っていたテティスの話が明かしてくれます。
つまり、女神テティスに象徴される人間の魂が、男神に象徴される不死なる神性を受け入れて育むことで、主神ゼウスを越える存在が生まれるのです。
主神が変われば、人間も変わります。
つまり、言語的秩序が無意識を抑圧するような人間の意識のあり方や、死すべき人間の運命が乗り越えられるのです。

「火」と「女」を贈られた人間は、堕落した不完全な存在です。
この「火」は文化を象徴するもので「知恵の樹の実」に相当します。
「女」はその知恵をも含めて人間を物質に向かわせます。
「生命の樹の実」に相当するのは、後の節で紹介するデルメルとディオニュソスが贈る「秘儀」なのです。
そして、ゼウスを越える神とは、ディオニュソスなのです。
 

  
posted by morfo at 08:34| Comment(0) | 不死探求の神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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