2013年02月18日

成熟のイニシエーション

部族社会では成人儀礼の後に、様々な秘密結社の加入儀礼や昇進儀礼が組織化されていることもあって、人は様々な成熟を目指します。
秘密結社には何段階もの位階構造を持つものがあって、各位階の昇進儀礼では、例えば、特定の精霊に関する知識とそれをコントロールする力が伝授されます。
成熟のプロセスと成人のプロセスは連続的なものだと言えますが、成人が物質的な生産に向かうのに対して、老年に向かう成熟はそこから引退してより霊的な価値観を持つ点で異なります。
成熟のプロセスは心理的には、様々な無意識の力を意識に統合していくのだと解釈できるかもしれません。

シャーマンは秘密結社の高位の人間以上に高い成熟を必要とします。
シャーマンのイニシエーションでは、解体死と再生というとテーマを含みます。
この点では通常の成人のイニシエーションと似ていますが、その実質的な意味はまったく異なります。
シャーマンはイニシエーションで、骨1つ1つにまで解体され、人体の細かい要素の把握と、それと関係した精霊のコントロールを身につけて再生することが要求されます。
また、天上や地下世界など、部族の宇宙観として知られるすべての場所に自由に行き来して、そこにいる霊的存在と親しくなって、様々なコミュニケーションを行います。
それに、火や水晶の獲得も必要です。これらは、霊的視力や不死の魂と関係しています。
シャーマンも無意識の様々な力を意識に統合する成熟を達成していると解釈できるかもしれません。


<シャーマンのイニシエーションのヴィジョン>

シャーマンはイニシエーションの時に、地下世界で精霊や祖霊などによって、体を骨、肉、血などのすべての部分を分離、解体され、頭も取り外されます。
そして、体は大鍋に放り込まれて煮られるのです。
この精霊的存在は、怪物のような恐ろしい存在であると同時に、知識を授けてくれる教師的存在でもあります。

この時、各部位を表す呪術的な言葉を教えられ(言わされ)、様々な病気の原因と治療に関する知識を得ます。
シャーマンには普通の人にはない骨や筋肉があって、それを教えられることもあります。
その後、新しく体が組み立てられて、シャーマンとなって再生するのです。
水晶を体の中に組み込まれることもあります。
目をくり抜かれて新しい目を入れられ、それによって患者の体を透視したり、精霊を見たりする霊視力を得ることもあります。
それから、耳に指を突っ込まれて、草木や動物、精霊の言葉を聴けるようになることもあります。
体の各部には、それぞれの働きを象徴する精霊的存在がいて、自然界にもそれぞれに対応する場所があると教えられる場合もあります。
このようにして、彼は病気を治療することができるようになって、シャーマンとして復活するのです。

死と再生は一般の成人儀礼にも共通するテーマです。
新しい成人は怪物に呑込まれ、噛み砕かれることで、子供として死に、大人として生まれます。
そして、八つ裂きの死と再生は、オシリスやディオニュソスなどの神話にも見られるのですが、秘儀宗教のテーマでもあります。
ちなみに、宇宙人によって人体実験されるという現代の神話的体験も、このシャーマンの解体のイニシエーションを原型としているのでしょう。
ですが、解体と再生が治療能力の獲得と関係しているのは、シャーマンだけの独特なものです。

シャーマンの解体=骨への還元の意味を、魂の不死性の獲得であると象徴的に考えることもできます。
ですが、解体には霊的な手術という意味合いがあるかもしれません。

精霊によって手術を受け、他人に力を与えることができる体に改造されるヴィジョンを見ることもあります。
またティエラ・デル・フェゴのヤーガン人シャーマンは、顔をこすることによって第2、第3の皮膚を現し、それを霊視できるようになります。
こういった一連の体験は、気の体(エーテル体)あるいは魂の体のコントロール能力と、感覚の変容(霊視能力の獲得)を目的としているのかもしれません。
解体は単なる象徴的体験やヴィジョンだけではなく、実際に客観的霊的存在による霊的な身体の改造(手術)が行われている可能性もあります。

身体の各部位を指す呪術的言葉には、その対象に対する操作能力があります。
こういった魔術的能力を秘めた言語は、後世のマントラや神名の原型と考えることができます。
シャーマンは精霊や動物とも、こういった象徴的・動物的言語で話をします。
シャーマンはイニシエーションの時以外にも、動物主への供犠として自分の身体を捧げたり、治療のために悪霊に自分の身体を捧げることもあります。
こういったシャーマンの解体、供犠のヴィジョンは、チベット密教の「チュー」の修行へも受け継がれます。
         
<シャーマンの飛翔のヴィジョン>

シャーマンは数日から長期に渡るイニシエーションを通じてシャーマンとなります。
核心的なイニシエーションは、トランスや夢などのヴィジョンの中で行われます。
シャーマンになることを決めた精霊、あるいは先代シャーマンが守護霊に引き合わせて、彼らのいずれかが霊界や魂の世界を案内し、シャーマンにとって必要な術を教えます。

通常は、まず地下世界へとトリップして、様々な試練を越えて道程を進んでいきます。
地下世界へは、大地の穴、洞窟、泉、樹の根などから降りていきます。
そして、爬虫類の姿になって苦悶する死者の魂で満たされた川を舟か泳いで進んだり、道程の途中で死んだシャーマンの骨が朽ちている橋を渡ったり、険しい山を越え、森を抜け、蛇や怪物などの障害を克服し、時には呑込まれて体の中を通り抜けたりして進みます。

そして、精霊などによって体を解体され、再度組み立てられ、新たにシャーマンの能力を持った存在として再生するのです。
こうして彼は病気の治療能力を得て、鳥に乗るなどして地上へ帰ってきます。

それから、彼は天上世界にもトリップします。
ですが、高い世界ほどシャーマンと言えども簡単には行けません。シャーマンは世界の中心にある大きな樹を昇って、北極星のすぐ横にある天の穴からその上の天の世界に上がります。
彼は天上の様々な霊的存在と交流して、太陽や月にも行きます。太陽は多くの場合、守護霊もしくはその天の至高神です。
そして、シャーマンは太陽の使いである鷲 や馬に乗ったり、自分自身が鷲となって、天上を飛行します。

このように、シャーマンはトリップによって霊的な宇宙の構造、死者の世界や、動物の主の居所などを把握して、その様々な霊的存在や魂とコミュニケーションを取って、そして身体の霊的構造を知ることによって、シャーマンとしての仕事や、様々な問題を解決することができるようになるのです。

posted by morfo at 13:16| Comment(0) | 成人と成熟の神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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