2011年03月11日

成人の英雄神話

男性の成人にとって、部族のイニシエーションで行われる「怪物に呑込まれる」と並んで重要なもう1つのテーマが、英雄神話の成人段階である「龍退治」です。

龍退治は、心理的には、無意識の力を制限して自我を確立するプロセスを象徴します。
ですから、龍を退治する「剣」は無意識をコントロールする言葉の力や知恵を象徴します。
神話では龍は、巨人、牛、大蛇などの姿でも現れます。
「龍退治」に続いて、多くの場合は「花嫁の獲得」のテーマが続きます。
これは、「龍退治」の結果的な側面、つまり、コントロールできる制限された無意識の獲得を象徴します。
「龍退治」はマザー・コンプレックスの克服、つまり、「母殺し」というテーマとも重なります。

「龍退治」は、原始的な部族社会では、ほとんど見られません。彼らにとって怪物や蛇は、創造的な存在であって、倒されるべき悪ではないのです。
龍退治は、多くは国家(王国)的な段階の文化と並行して現れます。
国家社会は部族社会と比べてより抽象的な秩序によって成り立っています。
それを体現する意識的な自我は、部族社会でよりも積極的に言語的な秩序によって無意識をコンロトールする必要があるのです。

国家社会の天地創造の神話では、主神による巨龍退治、巨人退治が語られることが多いようです。
この物語には国家樹立と文化創造と自我確立が重ねて象徴されています。
国家は征服部族と被征服部族からなっていますが、龍退治には、征服部族の神が国家の主神になって、これが悪龍に転落した被征服部族の神々を退治するという側面もあります。

バビロニアの神話では、主神のマルドゥクは、様々な怪物を引き連れた原初の女神で龍神のティアマトを戦いで下して王座を得ます。
マルドゥクは自分を呑み込んだティアマトの体を膨らませて中から滅ぼしました。
この神話には、「怪物に呑み込まれる」から「龍退治」へのテーマの移行を見て取ることができます。

ギリシャ神話では、クロノスが自分の王位を奪われることを恐れて自分達の子を呑み込みます。
ですが、ゼウスは自分の代わりに石をクロノスに呑み込ませ、クロノスから離れて育ち、後に父のクロノスの腹の中から兄弟達を助け出します。
ここには「両親からの隔離」と「怪物に呑込まれ、救出される」の救出する側のテーマを見ることができます。
その後、ゼウスはティタン神族を幽閉して王座を取り、人間に生ませた子ヘラクレスの助けで巨人キュクロプスを滅ぼします。
そして、最後で最強の怪物テュポンを息子のヘルメスの助けで破ります。
ここには「龍退治」のテーマを見ることができます。

ギリシャ神話の英雄テセウスは、父親から離されて育てられ、その物語の前半で様々な敵を撃退します。
これらの敵は、彼を海に沈めようとしたり、八つ裂きにしようとしますが、逆にテセウスにそのようにして殺されます。
ここにもイニシエーションのテーマの変容した姿を見ることができきます。
posted by morfo at 17:20| Comment(0) | 成人と成熟の神話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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